日鉄鉱業株式会社
2025年4月18日
更新日:

学びを根付かせ、未来へつなぐ。管理職が継続的に成長できる環境づくり
1939年の創業以来、鉄鉱石、石炭、石灰石などの鉱産資源の採掘・供給を行い、日本の鉄鋼・セメント産業を支えてきた日鉄鉱業株式会社。現在は、銅、石灰石を中心とした資源事業に加え、水処理剤や地熱発電など新分野にも展開し、持続可能な資源利用の促進にも取り組む。
安全な労働環境と地域社会との共生を重視し、資源の安定供給と環境保全の両立を推進している。
矢嶋 剛 様(写真左)、木村 俊介 様(写真中央)、 野田 崇 様(写真右)
管理職(ライン長)約100人を対象に「対話型」のアプローチを取り入れたマネジメント研修を実施。期間は2024年4月から3年間の予定
課題
・マネジメントの基本知識と共通言語の習得
・対話を通じた課題解決のスキル向上
・組織の持続的な成長を支える管理職の育成
成果
・対話を軸にした関わり方が浸透し、受講者の学びが実践へとつながりはじめている
・受講者同士の交流が活発化し、異なる視点を取り入れることで、新たな気づきや自信につながっている
・年間を通した複数回の研修とフォローアップが当たり前のことになり、学びが日常になりつつある
管理職の役割は、かつての「指示を出す存在」から、「組織を成長させ、部下の主体性を引き出す存在」へと変化しつつあります。特に、近年の働き方の多様化や価値観の変化により、変化に適応しながら成長を促すマネジメントが必要とされています。
日鉄鉱業株式会社様は、こうした環境の変化に対応し、組織の成長を支える管理職を育成するため、ライン長向けのマネジメント研修を実施。
取材では、研修を通じて得られた気づきや現場での変化について、人事部 部長の矢嶋 剛様、人事部 人材開発課 課長の野田 崇様、海外資源事業部の木村 俊介様からお話を伺いました。
(部署・役職はインタビュー当時)
導入の課題・背景
「失敗を恐れず、挑戦できる組織へ」対話を軸にした新たなアプローチ
――社員の育成やモチベーション向上に対して、どのような考えや理念を持って取り組まれていますか?
木村様:
当社は「一山一家族」という文化を大切にしています。この理念は、社員同士が家族のように支え合いながら働くことを意味し、個々の成長と組織の発展をともに目指す精神を表しています。
社員一人ひとりの能力や価値を高めるには長い時間がかかることを前提に、成長の機会を提供することが重要です。そして、社員が自ら考え、主体的に行動することで初めて、人材育成方針は実現されるものだと思います。
だからこそ、人事部は「黒子」に徹し、学びや気づきの機会をつくることが求められます。すべての社員にはそれぞれの役割があり、主役は「社員一人ひとり」です。
社員が誇りを持ち、生き生きと働ける環境を整えることが、これからの人的資本経営において不可欠だと考えています。
―― 今回の研修を導入された背景について教えてください。
野田様:
2023年5月に人材育成方針を策定し、それまでの育成体系を抜本的に見直しました。管理職には、これまでもマネジメントスキルを中心とした研修を実施していましたが、変化の激しい時代に適応するために、改めて必要なスキルや考え方を体系的に学ぶ場が不可欠だと考えています。
長い歴史のある会社なので、「失敗をしてはいけない」という意識が根付いている部分もあります。その一方で「失敗しなければ成長できない」というのも事実です。
こうしたバランスをどう取るかが、私たちにとって大きな課題でした。特に、管理職の役割が拡大し、部下との関わり方やチームの成長を考える必要性が高まっています。
また、管理職の負担が増している中で、従来の経験則に基づいたマネジメントでは対応しきれない状況が出てきています。
今回のライン長向け研修を実施するにあたっては、そうした課題を踏まえつつ、「小さな成功体験を積み重ねることで、自信をつけていく」「現場のリーダーたちが主体的に変化を生み出せる環境をつくる」ということを意識しました。

―― 研修をアイデンティティー・パートナーズに依頼した決め手は何でしょうか?
矢嶋様:
いくつかの研修機関を比較検討しましたが、アイデンティティー・パートナーズさんの「対話を重視する」研修スタイルが当社のニーズに合致していました。
研修というと、どうしても「知識を詰め込む場」になりがちですが、それでは実際の現場で活かしにくい。御社の研修は、受講者同士が実際の業務を振り返りながら意見を交換し、自分自身の考えを整理する場がしっかりと設けられていました。そのため、ただ受け身で学ぶのではなく、「自分がどう動くべきか」を具体的に考えられる研修になると感じました。
また、研修後のフォローアップが充実しており、学びを継続できる環境が整っていたことも決め手の一つでした。
木村様:
以前は研修が数年に一度しかなく、非日常的なイベントのような位置づけでした。社員同士の交流が中心になり、学びよりも「同窓会」的な要素が強かったと思います。しかし、今回の研修では連続性を持たせ、振り返りや次の研修に向けた準備を組み込むことで、継続的な学習の流れをつくっています。
マネジメントに関する知識や理解には終わりがなく、学び続けることが重要です。そのため、1年目は「耕す(解きほぐす)」、2年目は「種を蒔く」、3年目以降に「芽を出す」というイメージで、長期的に成長を促すプログラムを設計しました。
継続的な学びの場を提供することで、社員同士の横のつながりを強化できますし、学びを理論だけで終わらせず、実践とセットで定着させることができると考えています。
研修をポジティブな経験として受け止め、現場での行動につなげてもらうことを期待しています。

現在は海外資源事業部にご所属の木村俊介様。研修プログラムの導入時は人事部門に在籍し、企画や設計に深く関わられていたため、本取材にもご同席いただきました。
―― 研修の実施にあたって、懸念点はありましたか?
木村様:
最も懸念していたのは、「継続的に参加してもらえるか」という点です。これまでの研修では、受講直後は意識が高まるものの、時間が経つと現場での活用が難しくなるケースが多く見られました。そのため、今回のプログラムでは、学びが定着しやすい仕組みを整えることを重視しました。
【担当プランナーより】
研修後のフォローアップは、5人一組で行うチームコーチングを実施しました。受講生同士が学びを振り返ることができるよう、弊社は講師ではなく、ファシリテーターとして関わりました。
チームコーチングは毎回異なるメンバーで行うことで、ライン長同士の横のつながりを促進することにもつながりました。
研修の実施内容と成果
研修が業務の負担から成長の機会へ。執行役員が実感した受講者の変化
―― 研修を実施してみてのご感想をお聞かせください。
木村様:
「対話型の学び」が効果的でしたね。受講者はそれぞれの現場で試行錯誤しながらやっていますが、それをほかの人と共有する機会があまりありません。
今回の研修では、「マネジメントとは何か?」「自分のマネジメントスタイルとは何か?」などのテーマについて話し合い、受講者自身の経験を振り返る時間が多くありました。
単に理論を学ぶだけでなく、自分の経験をもとに振り返ることで、学びがより深まったと思います。
矢嶋様:
以前と比べて、研修への入り込み方が大きく変わりました。社長メッセージをサプライズ的に取り入れたことも効果的だったと思います。
「研修は会社の核となるプログラムであり、受講者には社長の代弁者になってほしい」というメッセージが伝えられ、受講者の多くが「今までの研修とは違う」と感じていたようです。会社がしっかりと準備し、本気で取り組んでいることが伝わった結果、受講者の姿勢にも変化が生まれたと感じます。

―― 受講者の変化はどのように感じられましたか?
矢嶋様:
研修中、受講者のモチベーションが変化していくのを感じました。傾聴し、積極的に発言するうちに、表情がどんどん生き生きとしていくのがわかりました。
最初は戸惑いながら参加していた人も、時間が経つにつれて前向きになり、場の雰囲気が活気づいていくのを目の当たりにしました。
―― 研修後の反響についてはいかがでしょうか?
野田様:
研修後の懇親会で、「今まで人事が実施した研修のなかで一番良かった」と複数の受講者から言われました。受講者自身が心から学びを実感できた証だと思います。
研修が単なる知識の提供ではなく、受講者の意識や行動を変える機会になったことが改めて確認できました。
矢嶋様:研修を見学した上級執行役員の方からも感想をもらいました。
当初は「多忙な時期に部下が研修に参加することで、業務に支障が出るのでは」と懸念されていたようです。しかし、研修を見学するなかで、参加者が変化していく姿を目の当たりにし、「この研修は本当に有益だと実感しました。今後は積極的に送り出したい」との言葉をもらえました。
研修の価値を現場の視点から認めていただけたことが、とても嬉しかったですね。
【担当プランナーより】
今回の対象者のなかには、すでに管理職としてのご経験が豊富な方も多く見受けられましたが、毎回の研修後には必ずフォローアップ(チームコーチング)を実施し、学びと実践の橋渡しができるよう設計しました。結果として、ご自身の経験や知識が体系化されたり、新たな気づきを得たという声も多く聞かれました。
アイデンティティー・パートナーズに感じる価値
研修だけではない、伴走しながら新たな視点を引き出す関係性
―― 弊社の研修について、感想をお聞かせください。
木村様:
研修を進めるなかで、アイデンティティー・パートナーズの皆さんとの対話が非常に大きな価値を持つと感じました。
特に担当プランナーの堀江さんとのやりとりは、コーチングやカウンセリングのような側面もあり、研修をより深く考えるきっかけを多くいただきました。
解決策を一方的に提示するのではなく、現状の課題がどのような要因で生じているのか、その背景まで掘り下げながら一緒に考えるプロセスが、とても印象的でした。
また、御社の皆さんが、「対話」を単なるコンセプトとして掲げるのではなく、実際に日々の打ち合わせからそれを体現されている点も、信頼につながっています。
研修をつくり上げる過程のなかで、こちらが新たな視点を得ることができたのも、その対話の積み重ねがあったからこそだと思っています。
さらに、研修の本質を大切にしながら、クライアントとともに質の高いプログラムを作り上げようとする姿勢も感じました。だからこそ、今後もパートナーとして、一緒に改善点を見つけながら、よりよい研修をつくり続けていきたいです。
今後について
変えるべきものと守るべきもの。長期プログラムの本質を見極め、より実践的な学びへ
―― 本研修の今後の展望について教えてください。
木村様:
ライン長研修を進めるなかで「ネガティブ・ケイパビリティ(答えをすぐに出さず、不確実な状況に耐え、熟考する力)」と「対話」の重要性を改めて実感しました。
従来の研修は解決策を提示することに重点が置かれがちでしたが、私たちは「答えをすぐに出さない勇気」を持ち、じっくりと課題に向き合っていきたいです。一緒に課題に取り組み、結果を見ながら次の策を考えるというスタンスが、研修の価値をより高めると信じています。
今後も、研修を一方的な知識提供の場にするのではなく、対話を通じて受講者が主体的に考え、気づきを得られる場にしていきたいです。
矢嶋様:
研修は単なる一過性のものではなく、継続的に進化させていくものです。長期にわたるプログラムだからこそ、当初の主旨を忘れず、必要に応じて柔軟に変えていく部分と、変えてはいけない本質的な部分をしっかりと見極めることが重要だと考えています。
野田様:
研修が本当に意味を持つのは、受講者が学んだことを現場で実践し、その変化が部下に伝わったときです。これからは、研修で得た知識やスキルがどれだけ現場で活かされ、組織全体に影響を与えるのかを見極めていく必要があります。継続的な学びの場をつくることで、組織全体の成長につなげていきたいと考えています。
■担当プランナーからのメッセージ
今回のインタビューで、私とのお打ち合わせが研修に対する思考を深めるきっかけになったというお言葉をいただけたことは、大変ありがたく思っております。
私たちは「対話」を大切にしています。私自身、何かを理解する際には対話が非常に重要だと感じており、日鉄鉱業様の皆様との打ち合わせでも、常に対話を重ねながら理解を深めていきたいという思いで臨んでいました。
対話は、理解を深めるだけでなく、自分にも相手にもなかった(または認識していなかった)新たな考えを導き出す力があると信じています。今回、ご担当者様に当社の「対話」の価値に共感していただけたことが、プログラムの導入・実施へとつながったのだと感じております。今後も、私たちは対話を重ねながら、日鉄鉱業様の存在価値や、従業員お一人おひとりが感じる「日鉄鉱業で働く意味」をさらに高められるよう、伴走してまいります。