top of page
アイデンティティー・パートナーズロゴ

アゼアス株式会社

2022年8月23日

​​更新日:

「自立的な人間」を育てるために研修の旗振り役として考えていること

1947年設立の株式会社千代田屋、1954 年設立のニチウラ株式会社が対等合併し、1998年にニチウラ千代田屋株式会社として発足。国内10ヶ所、海外5ヶ所2022年1月現在)を拠点に防護服・環境資材、機能性建材、アパレル資材の3つの事業分野で構成。独自の技術や強みを活かした製品開発と価値提供に努め、お客様の満足度の高いビジネスを展開している。

鈴木一裕 様 (写真右)総務部部長
五十嵐 克己 様 (写真左)総務部課長

実施概要:

管理職、非管理職あわせて8等級に分かれる一般社員のうち、非管理職「実務上級職」に対して2020年に「課題解決研修」を実施。主体性を磨いていく研修内容だった。2021年は「実務中級職」の社員に対象を拡げ「ロジカルシンキング」と「課題解決研修」を行うとともに、「課長にはコンピテンシーコーチング研修」により育成の役割を認識してもらい、次世代リーダーの育成を支援している。


※企業名、担当者肩書き、プログラム名はインタビュー実施日(2022年1月19日)のものです。

 

【 目 次 】



 

 


取り組みに至った背景


--現在、弊社研修を導入していただいております。御社がこうした取り組みに至った背景ときっかけを教えてください。


五十嵐様 当社は、2020年7月より新人事制度を導入しましたが、その目的の一つは、チャレンジングな姿勢をもった社員を早期に育成できる人事制度にすることでした。


「企業は人なり」と言われているとおり、人材の重要性を認識していない会社はないと思います。


当社でもよりよい新人事制度への見直しに向け、評価・育成・処遇の三位一体の改革が不可欠であり、人材育成においては次世代を支える社員を育成することが課題となっていました。



--自社で研修を運営しようとは思いませんでしたか?


五十嵐様 当社では総務部で人材育成を担っていますが、社内の関係者だけで運営する研修では育成ノウハウや活用できるリソースに限界があり、期待している質とのギャップを埋めきれません。


規模が150人くらいの会社なので 、3、4年ごとに転勤・異動はあるにしても、いろんな人と接点を持てる機会は限られています。 何かを学ぶときに150人のスキル、知識しかないのです。


これから社会や環境がどんどん変わっていく中で それだけのレベル感でいいわけはありません。社外で積み上がっている新しい考え方や知識、経験をもっと吸収していく必要があります。であるなら、社内だけで運営していくのは限界があると思いました。


--自社による運営だと伸びしろに限界があるとお考えだったのですね。


鈴木様 例えば考え方の講義なら自分たちでもできると思ってやってみたことがあります。でもあまり上手くいかなかったですね。継続が難しい。


研修って一回やっても意味がないじゃないですか。継続してやらないと意味がないのだけれど、費用面と時間面と人数の多さとでうまくいってなかったというか。当社の規模ですと総務がやることになりますが、準備と運営にどれだけ時間が割けるのかというのも問題でした。



五十嵐様 外部機関に協力を依頼すれば、人材開発や研修に関する専門知識・ノウハウが活用できるとともに、最近の社会トレンドをおさえた研修を運営することができます。


また研修成果の検証において、第三者的な立場から参考意見として評価してもらうことで、当社の人材のレベルや特質を把握することも可能です。


新人事制度を定着化させるため、外部機関を活用して質の高い研修を運営することは、従来以上に重要なテーマでした。


--研修における質の高さとはどんなものだとお考えですか?


五十嵐様 「研修やってよかったね」と、自己満足で終わるのはよくないですね。ゴールの目線をどこまで求めるか難しいところですが、理想としては研修をすることで会社が発展し、企業価値が上がるところまで結びついて、はじめて「人材育成がうまくいった」という振り返りになると思っています。


短期的な見方をすれば、参加者に満足してもらって、ちょっとでも日常業務に活用してもらえる知識や考え方を提供できることですね。



依頼しようと思った理由


--いろいろと情報を収集されたうえで、弊社を選んでいただけた決め手は何だったのでしょうか?


五十嵐様 御社に委託した理由は二点あります。一点目は、いわゆるプログラムのカスタマイズが可能だった点です。


御社では、数多くの種類の研修プログラムが準備されていますが、当社が抱える課題や受講者に到達させたい目標などを把握したうえで、ニーズに応じて研修の内容や構成に工夫を加えていただけました。



人材開発で抱える課題は会社によって違いますから、各社の実態、参加者の特性や育成目的に適った研修を運営して初めて大きな成果が期待できるものと考えています。その点、御社の研修運営スタイルは当社の希望に沿ったものだったと実感しています。


丸投げにしない分、研修を企画している総務部でもそれなりの手間暇がかかることになりますが、研修の成果としては大きなものが期待できると思っています。


--ありがとうございます。もう1点はどんなことでしたか?


五十嵐様 二点目は、弊社の総務部が御社と一緒に動くことで専門知識やノウハウを吸収できる点です。


研修の運営を外部機関に委託するにしても、効果的な研修を作るには、当社自身が人材育成を経営課題と捉え、人材開発の基本理論や研修運営のノウハウを知っておく必要があります。


人材育成方針や育成体系の検討からOJTへの取り組み、キャリア開発のサポートまで、一連の人材開発の枠組みが有効に機能する仕組みを設計し、それを運営することで効果的な人材開発が初めて可能になります。そのために総務部自身が、専門知識やノウハウを積み上げることが必要です。


本屋に行けばこの分野の本はいっぱい積み上がっていますけれど、経験してみないと運営する側もわからないじゃないですか。日頃から研修業務を仕事にされている会社さんに教えていただければ我々の知識ノウハウも増えていきますし、それをもとにまた今後の研修が立案できると思っています。


当社には人事や人材開発専門の部署はありません。総務部が兼任していますが、時間や体力に制約があるなかで、御社とのミーティングを通じて、人材育成に関する知識やノウハウを効率的に吸収できる機会が持てることは大きな魅力でした。


鈴木様 当社は教育のために人が割けるほどの規模感ではありません。だからといって研修を丸投げでいいとも思っていません。


当社の場合、研修に対するノウハウがないと言うか、 研修会社に対してのノウハウがありません。どんなふうに研修を旗振りしていくべきなのか、研修のやり方と手法を学ばなきゃいけないと思っています。



職場での変化


--一連の取り組みによって、御社においてどんな変化が感じられましたか?


五十嵐様 研修の成果が業務の成果として目に見えようになるには、どうしても時間がかかりますので、まだ胸を張ってお話しできる段階に至っていないのが正直なところです。


しかし人材開発に対する社内の意識は変わってきています。経営層から担当者まで社内全員の意識が変わり、従来以上に関心が高くなっていると少しずつですが実感しているところです。


--意識の変化はどんなところで感じられましたか?


五十嵐様 今年度の研修プログラムは、OJTによる研修後フォローアップも含めて半年以上の長期にわたるものでした。事後アンケートのコメントで、課長が「目標管理評価制度で担当者の育成を自己目標として掲げ、従来以上に熱心に育成に取り組んだ」「担当者の研修課題を課長が的確にアドバイスすることで、お互いが一層強い信頼関係を築くことができた」「今までこういう経験がなかったので、やって良かった」といった声がありました。


言われたからやるのではなくて、日常業務の中で課長が担当者に対して OJT を実施する「育成の重要性」が理解してもらえていることの裏返しかなと思いますね。


鈴木様 課長が部下を見ることによってコミュニケーションが増えているのはいいですね。学ぶときに必要なことって「きっかけ」じゃないでしょうか。気づくきっかけさえあれば、あとは本人次第です。だからいかにきっかけを作り、本人たちが行動しやすいようにしてあげるかが重要です。


1回の研修で飛躍的に改善されることはないと思うんですよ。ただそのきっかけで飛躍的に跳ねる人が多くなればなるほど、会社は活性化します。だからいかに早く気づいてもらえるか、ですね。



五十嵐様 業務スキルや知見の向上は、一朝一夕に進むものではありません。だからこそ継続して地道に取り組むスタンスが基本で、そのためには社員全員が人材育成の重要性を認識し、日々の業務の一環として取り組む意識が欠かせません。


社員の意識改革が進み、人材開発への関心が高くなっていること。さらには研修で学んだ知見を活用して担当者の育成や自身のスキルアップに取り組んでいることなど、現場における育成活動の進展は一連の取り組みの成果だと感じています。



今後の取り組みについて


--今後に向けての取り組みについて、どんなことを考えていらっしゃいますか?


五十嵐様 今年度は、御社にご指導いただき、日常業務の課題解決を目的としたフォローアップセッションを設け、研修後OJTに力を入れたプログラムを運営しました。フォローアップセッションに対する社内の評価結果はまだ出ていませんが、運営に携わった当事者としては、なかなかいい取り組みだったのではないかと感じています。


これまで研修当日の企画、運営に目が行きがちでしたが、今年度の経験をもとにさらにOJTに焦点を当て、発展させたプログラムを運営していくことが今後の目標です。


社員の立場であれば、学んだ知見やスキルを業務で活かして成果を上げることで、仕事をする喜びや自分自身の成長を実感するでしょう。会社としても、経営理念やビジョンに基づく経営計画・戦略を実現するための人材開発ですから、育成を通じて具体的な業務上の成果を追求していくスタンスは非常に重要だと思っています。


鈴木様 人間は目標があると突き進むことができますけれど、そもそも目標がない人ってけっこういますよね。キャリア計画シートを作って上司と相談をしてやっていくにしても、じつは目標自体に怪しいところがあったりします。自分が将来何をやりたいのか書いてもらうと、2、3年目と5年目で書くことがだいたい一緒だったなんてこともあります。


だから明確に目標を想像できるような仕組みを作りたいですね。目標ができてやるべきことが自分のタイムスケジュールの中に組み込めて、その人が自分でスイッチを押せる。成長した人の集合体が会社になっていくという流れを目指していきたいです。



--御社は社員の方のキャリアデザインにも力を入れていらっしゃいますよね。


五十嵐様 はい。その意味では社員が十分なキャリア設計できるよう、キャリアデザインのサポートを充実させていくことも重要な課題です。


終身雇用を中心とした従来の雇用関係では、企業が主体となってキャリア設計をマネジメントしてきましたが、今は社員自身が自らの考え方や志向を自覚し、その実現に向けて意欲的に仕事に取り組んだり、必要な職業スキルを開発したりするスタンスが求められています。


残念ながらまだまだ個人としての自覚が弱く、取り組みが不十分な社員がいることを感じていますので、会社と社員が共同してキャリア開発に取り組み、会社としての育成方針を明確にしつつ、社員自身が主体的にキャリアデザインしていけるよう、社内教育を徹底していきたいと考えています。


なんとなく上のポストを目指すのではなくて、自分の人生について真剣に考え、それを達成するまでに自分自身として何をやっていくのか。そういうところも含めて社員と話をしていきたいです。


--新型コロナウイルスの影響がまだまだ続きそうな状況ですが、御社の人材育成に影響はありますか?


五十嵐様 新型コロナウイルス感染症のまん延がきっかけとなって、オンライン研修が社会的にも急速に普及してきました。その影響はありますね。


当社では各人に十分な機材が手当てできていないため、現地とオンライン参加を併用して研修運営してきました。研修の手段の選択肢が拡がるのは好ましいことですが、研修内容やプログラムに応じて上手に使い分けていかなければ研修効果が上がりません。


集合研修とオンライン研修をどう使い分けていくのか、このような知見を増やしていくことも今後の課題の一つです。



ご担当者としての思い


--最後に、ご担当者としてのお考えや思いをお聞かせいただけますか?


五十嵐様 人材育成の成功に向けた近道はありませんし、こうすれば必ずうまくいくという絶対的な方法もありません。同じやり方であっても、成功するときもあれば失敗することもある。非常に奥が深い分野です。経営理念や戦略の実現にも不可欠な要素で、経営の根幹にも関わってきます。


したがって、人材育成・人材開発の企画立案業務は大変やりがいのある業務だと感じていますし、このような業務に関われていること自体に大変喜びを感じます。業務を通じていろいろな人と接点が持てていることも楽しみの一つです。


社長からも言われているのですが、自立的な人間を育てていかないといけないですよね。


教育体系全体をどうするのか、どういうスキルの研修をやったらいいのか。そういうことを一人で頭の中で考えられるくらいのスペシャリストになりたいと思っています。御社と話をしながら人材開発の基本理論や、育成のノウハウ・スキルを吸収し、当社に今必要な研修を頭の中で整理できる社内スペシャリストになれるよう、今後も努力を続けていきます。


鈴木様 今後の世代がどうなるかわからないですけれど、今より組織を意識しない世代になってくるかと思います。それに向けてどういう教育をしなければいけないのか。考え方がガラッと変わるかもしれないですよね。


そういった考え方の変化は、社内の教育を担当していたとしてもなかなか気付けないと思うんですよ。御社から気づきや変化を提供していただいて、より良い人材開発をしていけたらなと思います。


おそらく30年前にも今とは違うけれど同じような悩みがあったでしょう。時代に応じたものを提供していただいて、当社のスタイルを模索していきたいですね。



担当プランナーからひと言


今回、アゼアス様の人材育成に携われたことにまずは大変感謝しております。


鈴木様、五十嵐様がおっしゃるとおり、人材育成は可視化された成果やわかりやすいゴールが設定できる分野ではないと感じます。だからこそ労力も掛かりますが、社員の方々が成長される姿や経営層から「やってよかった」というお声が聞けた時は、大変うれしくもあります。最終的なゴールは企業の成長につながることですので、やりっぱなしではなく継続的なストーリーを描いて、これからもご支援ができたらと考えています。


人事の方々は教育に加えて採用や労務も兼任している方もいらっしゃり、非常に多岐にわたる業務内容だと感じます。お会いした際には、私自身もお役に立つ情報を一つでも多くお届けできることを意識して関わらせていただきます。


2020年から私たちなりにアゼアス様のお力になれるよう尽力してまいりましたが、今後さらに発展したお手伝いができるよう、私たちも成長および伴走していきます。


改めまして素敵な機会をありがとうございました。




Text: 加藤久佳

Photo: 田中樹


bottom of page