日本たばこ産業株式会社
2024年10月9日
更新日:

受講生が『自信が出来た』『私でも出来るかも』と目を輝かせ、思考や行動のアプローチが日常的に変わっていきました。
※企業名、担当者肩書き、プログラム名はインタビュー実施時点のものです。
実施概要:
貴社が感じる課題感や導入の理由を教えてください。
河北:貴社とは、私共のビジネススクール構想の段階からの長いお付き合いをさせていただいております。2015年開学の際にも、貴重なご意見を頂くと共に、背中を押していただきました。大変感謝しています。お陰様を持ちまして、第1期生から派遣継続いただき、現在は19期生が学んでおります。早いものですね。
日本を牽引する企業として、貴社の多様化推進は早い段階からスタートしておりますが、画一的な取り組みではなく、常に問題を分析し、枠にはまらない先進的な取り組みをしていた認識があります。
当方のスクールへ派遣する受講生の人選においても、指名制が圧倒的に多い時代に「選抜条件の枠外で埋もれている可能性を拾い上げ開花させたい」と他社がトライしたこともない発想で取り組んでいた事などは印象的でした。
正路さま:ありがとうございます。私は何代目かの担当となりますが、根底に共通するのは、この会社の風土を支える、多様性の尊重に繋がってくるのではないかと考えています。
今の時代でこそ、DE&Iが謳われていますが、以前よりJTグループとして先進的に多様化の推進や人財こそが競争の原点であることは変わっていません。
時代が変わってくる中で、当時はやはり女性社員に対しては、ライフプランを含めての活躍の質や、ワークとライフがトレードオフではなく相互にシナジーを上げるイメージを持てなかったり、理想のイメージがあっても職場の現在地には大きなギャップがあったりしました。また組織においては、やはり、今ほどはインクルージョンという視点が足りていなかったというのが課題感であり、当初はそれが導入のきっかけでした。
河北:2015年当初は「両立のイメージがもてない」「ロールモデルもおらずに不安」「管理職になりたくない」「自分には自信がない」ところからスタートでしたね。しかしモヤモヤを抱えている受講生こそ問題意識が高いのです。社会を知り、自分を知り、組織を知り、多様な業種業界の仲間との他流試合を通して、ビジネス知見を学びながら視座を上げ、自らのバイアスや可能性に気づいてゆくと、「自信が出来た」「私でも出来るかも」「悩んでいた両立の道筋が見えた」「管理職へのチャレンジは、勿論していきたい」「自分こそが沢山のバイアスに囚われていた」「自分らしいリーダーシップを描いていいと分かった」と目を輝かせ、思考や行動のアプローチが日常的に変わっていきました。
また、御社は、内製研修、ビジネススクール派遣以外にも多様な面から施策を展開していました。女性のキャリアカレッジとして、全国から管理職前後の女性ビジネスパーソン約200名が集い、当方の修了生である他社のロールモデルを交えてワークショップを実施。また私と経営層の方との対談インタビューなどもありましたが、絵に描いた餅ではなく悩みつつ意識変革していく様子を社員の皆様にリアルに知っていただく内容であり、現場に浸透させてゆく取り組みの一つとして展開していました。御社は、大企業の安定志向と大きく変化する時代のはざまの中で、試行錯誤しつつも常に前を向いて、個に対する考え方、多様性を大切にする組織の価値観が脈々と構築されていったのだと感じています。
そして今、これまでの延長線上ではもう難しい時代を迎え、事業戦略として、組織と個人としての双方の視点をすり合わせ方向付けるこの10年を考えていらっしゃると思います。今、どのような課題感をお持ちでしょうか?
正路さま:人事の立場からいくと、おそらく課題感は2つあると感じています。ひとつは会社側で、もうひとつはご本人側です。会社側の課題はやはり無意識のバイアスです。どうしても旧専売公社からのDNAが流れているなかで、今ではほとんどなくなったと感じていますが、過去には 「仕事が欲しければ飲みに行く」のような、接待スタイルがあったとも聞いています。結果として、個人の評価がより「周囲に見られる」要素で加点があった時代とも言い換えられるかもしれません。
過去をすべて否定することはしませんが、事実、現在と比べるとライフプランによる非連続性に対しての配慮が無意識のバイアス下で欠如していたのではないかと思います。そして、その環境に対してなかなか声を上げられなかった女性社員も多くいたのでは、と拝察しています。
そこが明確な課題なのかは一概には申し上げることは難しいかもしれませんが、そのような環境を会社として「すべて払しょくしきれているか?」というと、今でも解決しきれていない瞬間もあるのだと思います。日常の一人一人の行動にいい意味での「懸念」を持ち、なおかつ建設的に意識を持って取り組んでいける人間をひとりでも増やさないことには物事は変わりません。
そういった意味でも、受講を通して、ひとりでも多くの社員の意識を前向きにしていくことが出来、社内で実績を残せるように一本の筋を作っていくというのが、会社側の命題です。
河北:世界を相手に戦うために鋭く舵を切る必要性がある組織として、事業戦略も組織運営も、社員個人としても極めて本質的な命題ですね。
日本は大きな岐路にたっていますが、これまで漠然とおかしいのではないかと感じながらも、大勢に飲まれたり、蓋を閉めていた問題意識にも、本当にそれでよいのか?と日が当たってきています。
正路さま:そうですね。例えばですが、当社のたばこ事業が現在はグローバルであるなかで、海外では女性役員や管理職比率という点では一定程度の担保がなされている状態でもあります。もちろん、非常に優秀な方々が登用されていることも事実です。
また、私個人のお話になりますが、私は中学・高校とアメリカにおり、男女差別のようなものが少ない世界でずっと過ごしてきていました。そういった意味では、無意識のバイアスが抜けきれていない人はまだまだいる感覚を個人的に持っています。組織においては、日本特有の課題感は、やはりあるなと感じますし、ご本人たちも、そこがうまく言語化できないというジレンマもあるのだと思います。
河北:そうですね。しかし組織も個人もバイアスを認識するにおいては、ビジョンが助けてくれることも多いです。例えばD&Iの必要性は頭で分かっていると認識しているが、実際にはどんないいことが起こるのかという具体的メリットや、一人の人間としてイメージを肌感覚として持てていないことがよくあります。したがって、組織の現実も、個人の現実にも至っていない、課題感を受け止めていないことなどがよくあります。
ビジネススクールのコースプログラムに関しては、どう感じられましたか?

松井さま:先ほど、お話に出てきた無意識の「私は女性である」「私はこういうタイプである」「だから会社でもこうあらねば」というものに、私もどこか縛られていたと思う部分がありました。ポジションが上がっていくことに対して、意欲や興味を感じても、そこには見えない壁があるような気がして、そこにたどり着くには「鎧を着なければいけない」「私が変わらないといけない」とか「足りていないものは何なのか?」と少しネガティブな気持ちも持っていたかと思います。
ビジネススクールのプログラムで学ばせていただく中で、そういった気持ちすらも、初めて実感しました。自身が気づいておらず、認識できたことはとても重要なことであったかと思います。
また、私は主人が仕事を頑張れる環境を作ってくれており、家庭での環境が整っていると思いますが、それでも自分の中に課題がありました。どれだけ頑張っても「こんな感じかな」と変に満足してしまったり、なんとなく仕事がわかるようになりある程度評価される年齢に差し掛かってきてから、余計にそれが通常稼働だよねと思い込んでいたように思います。
今回スクールのコースプログラムの受講に送り出していただいて、初めて自分で自分の殻を作っていることや、限界を決めていることに気が付きました。性別や会社のせいではなくて、自分で思い込んでいたと分かったことがいちばん大きな気付きでしたし、私のような人が少しでも増えていくのなら、とても意味がある素晴らしいプログラムだと思っています。
河北:ありがとうございます。単純に自分で思い込んでいるだけではなくて、実際には、過去の育成環境や組織風土、社会の流れなどいろいろな影響が絡まっていることもありますが、まず、自らが気づき認識することが重要です。バイアスだけでなく、自分の才能や可能性も同じでして、単に教えられても腹落ちしません。
また、意味付けを考え、理解して言語化し行動することでやっと、本当のところで認識することができます。少しお話がずれてしまいますが、女性はロールモデルという存在が少ないのでリーダーになることを考えたことがない、イメージしにくいという事が(随分少なくなりましたが)未だあります。
しかし男性は異なり、ロールモデルは目の前にたくさんいたりしますよね。だからこそ、男性はそういうものだと鵜呑みにしやすく、別の意味で課題を抱えているとも言えます。実は男女問わず、そのこと自体がバイアスを促進してしまうことがあります。
さきほどお伝えした、社会性、組織の中の役割期待、仕事も生活を持つ自分自身という点に気づき、その関連性を実感し、自らの意味づけを理解して行動することに一つの解決策がありますが、それは、生産性や創造性、エンゲージメントやウェルビーイングにもつながっており、男女ともに一緒です。また男女は同権ですが、同質ではなく、それ以前に個は夫々異なり多様ですので、分断せずにそれを活かしあうと上手くいきますね。
ライフイベントも女性だけのものではないですが、女性に負荷がかかりがちの方もいらっしゃいます。自分が考え内省する時間を持ち、より幸せに働いて生産性が上がり、成長していく循環を自分だけでなく周囲とともに作っていくことの大切さをご理解いただけたらなと思います。
正路さま:おそらく女性のほうが相手の立場に立って行動してみる機会を男性以上に自律的に得ている感覚があります。大きなライフイベントでいうと、出産や子育てがありますね。
昔の日本であれば、人によって違いはあれど、ライフイベントでキャリアが止まってしまっていた時代もありました。
今ではそこにしっかり働くということがアドオンされてきたなかで、どうバランスを取るのかを考えられている一方、全員ではないものの、男性は逆だと感じます。仕事があり、そこに家庭や育児がアドオンされるという順番になっていますよね。
当社を見ていると、30代以降の子供を持っている男性社員は、送迎やお世話を自分がしたり、奥さまが飲み会に行くなどが当たり前という、理解がある方が増えてきている気がします。
ですが、例えば「週末に子どもの面倒を見てやったんだ」というような発言を先輩社員から耳にすると、捉え方が違いませんか?と思うんです。私も毎日できていないのが正直なところですが、相手の立場で物事をやるからこそ分かることもありますよね。私は、妻が出産した際に育休を取得しましたが、一日フルで家事をするってすごいことだと、やったからこそ分かりました。
河北:それは大きいですよね。最初の大変なときはパパもママも両方が共に新米ですからね。
松井さま:相手の立場に立つってやっぱり難しいなと思います。見てて大変そうだなというのは分かりつつも、何をしたら良いか分からないという男性は多いのではないでしょうか。
自分が動いてみて、初めて相手が楽になることや大変さには動いてみないと気付けないですよね。
河北:そうですね。そういった経験は、実は仕事にもとても活かせると思います。子育てはまさにとてつもないマネジメントスキルだと私は思いますし。
正路さま:そうですね。子どもからしたら、うちはパパとママがいても基本的にはママにいくんですよね。これはおそらく母性というものが、男性が唯一、遺伝子的に持っていない部分なので、真似できないです。妻にはリスペクトの一言に尽きます。
河北:逆にパパしかできない、得意なところもあるので、そこがお互いにわかりあえると良いですね。
松井さま:各家庭でいろんなバランスの取り方があると思います。もっと仕事を頑張りたいママがいたり、もっと家事をやりたいパパがいたり。先ほど学長がおっしゃられた通りで、各々の置かれた環境や持っている価値観のなかで、どういうバランスを求めていくのかですね。自分の価値観を大切にしながら、周りを巻き込んで世界を変えていくのは、自分が動くことだと認識して進めないと、周りはなにかしてくれるわけではないので。
河北:自己起点で考え自分軸をもつという事、そして自分から行動するという事ですね。どう感じて考えて動くのかは性別に関係なく必要です。受け身で誰かを待っていたり、不安な気持ちだけで終わっている方はもったいないです。プログラムを終了すると、そういう点がなくなってくるのではないでしょうか。待っているのではなく、自ら行動することが出来るようになる。他者とも創発できるようになる。どうしたら分かってもらえて、意見を言えて、人に助けを求められるのか。自分が頑張ってひとりぼっちで苦しんだり、戦わなければいけないモードから脱してもらたいといつも思っています。
松井さんは一気に世界が広がって、立ち上がりが早かったイメージがあります。どういった点がそうさせたと思いますか?
松井さま:ビジネススクールへの受講も最初は少しだけ「自分が評価されたり認められてここにいるわけじゃない」「会社の意向なのだな」と斜に構えていたところはありました。
しかし、入学オリエンやスタート時のイベントで、修了生の方々のパネルディスカッションでお話を伺ったり、等身大の自分で良いことや、自分になにかが足りていないから受講しなさいということが受け入れられるようになり、
「私でもできるんだ」と思えたことが大きなきっかけです。急にパッとなにかが晴れたような感覚でした。
そこで、後ろから応援してくれる、上司やメンバーや家族という存在がより明確に見えて、背中を押されて、いい循環が生まれてきたと思っています。
河北:受講生のみなさんが「上司の言っている意味が分かるようになった」「周囲の方にいかに助けられているかが実感ができ感謝を自然に伝えられるようになった」と良く言ってくださいます。それってとても大事ですよね。自己信頼ができ、松井さんが「世界は広いんだ、狭いところにいないでもっと長距離走みたいな形で見ていいんだ」とおっしゃっていたことが意図を掴んでくれていると感じて、とても嬉しかったです。
松井さま:今までは、薄い膜のようなものが張っていて漠然とですが、管理職から先は自分と縁遠い世界だと思っていました。決められた範囲でしっかりやっていれば、お給料は最低限もらえて、結婚して子どもも生んだし、こんな感じかな、と。
そこから視野が広がり、明らかに行動が変わりました。今まで目が向いていないところに価値を感じたり、感謝の気持ちが生まれたり、困っている人を助けたいと思えたり、というのが自分の行動に繋がって、それがまた次の一歩になってフィールドが広がっている感覚があります。
会社からチャンスを与えてもらいましたが、自分が変わることで可能性を感じられて世界が広がって見えます。
河北:それによって、仕事へのスタンスや影響はありましたか?
松井:そうですね。今、初めてチームをリードしてみるように言われていますが、等身大でできているので無理している感じが自分自身でないですね。分からないことは分からないですし、できないことはできないです。それでも自分が今まで持っているスキルや学んだ知識といった引き出しの中からメンバーと議論をしたり、上司との議論に持ち込むということ等ができています。私もひとつずつ成長していくんだと実感できます。
完成されたマネジメント像やリーダーシップではなくても、私もメンバーも共に成長できると伝えています。自分も発展途上だと思えるからこそ、メンバーとも等身大で向き合えていますね。
河北:素晴らしいですね。会社もいろんな戦略を作っていますが、完成されているわけではなく変化の真っ只中ですが、人も同様です。多様性を認め合い、補完し合い化学反応し合いながら前進しよう、共に価値創造していこうということです。
松井さま:本当にそう思います。相手に成長を求める立場なので、「私も成長するからそれを信じてほしい。なので、言いたいことは何でも言ってほしい」とメンバーには伝えていることもあって、無理がないんですよね。
河北:松井さんのような方が増えて浸透していく影響が大きくなったら良いと思います。
成果を上げる施策について注意すべきことは何ですか?

正路さま:そうですね。自社としてのビジョン実現に向けての施策や継続的に教育プログラムの受講をしていくことはもちろんです。
陥ってしまうと危険だと思っているのが、定量的な目標に落とし込んでいくことです。諸外国に関しては、さまざまな制度を導入しています。日本企業が数字にコミットしにいこうとすると、ご本人たちのWILLに対して応えているものになっているかという議論を慎重に重ねる必要があるのではないでしょうか。
例えば、当社では女性管理職の比率をグループ全体で定量的に掲げおり、ジェンダーエクイティも含めて、どんどん進めていけば良いと思いますが、数字に縛られて適切な手段を打たずに登用してしまうと、アンハッピーな世界になってきますよね。
ライフイベントしかり、本人たちがありたい姿や目標を掲げているのかという点は、昨年から会社としても年に一度のキャリア面談の中で、自らが人生のなかでいかに会社に貢献できるか等、ご自身のパーパスや目標といったものをすり合わせをしています。
研修をはじめ、女性活躍推進などをやっている身としては、改めて、一人ひとりが声を出せるような取り組みをひとつでも増やしていくことはとても大切だと思っています。
会社から強制的に与えるのではなく、一人ひとりの思いや価値観、信念というところを可能な限り、私たちも認識したうえで、会社と社員の双方がWin-Winとなれば良いですね。
プログラムのなかで想定外だったことなどはありますか?
松井さま:2つの観点があると思います。ひとつは、もともと知っている知識がアップデートされたことです。私はマーケティングや事業戦略などのビジネス側にいたので、知識としてはあったのですが「それじゃ駄目だよ」と言ってくださる先生がいたりしたことで、言論的なものを知っているだけではいけないと気付かされました。何が起こっていて、世界がどう進んでいるのかを知って、自分が狭い世界にいたと感じられました。
もうひとつは、自分の新たな可能性を掴むチャンスをもらえたことですね。自分の心が動いて、良い意味で落ちこんだり、元気が出たりしました。プログラムを通してさまざまな場面で心を揺さぶられることを楽しめたんです。2つは両極端ですが、知識とマインドの部分で自分が揺さぶられたことはいちばん想定外でした。
正路さま:私は研修に派遣をする側の立場の人間として、あえて仮説を持たないようにしています。「この人ならこう育つだろう」「この人はここに課題がありそうだ」というのは、こちら側の決めつけにも近いと思っています。そういったこともあってか、良い意味で新しい発見はないですね。私の中では全て新しいので。
「こう感じるんだ」「こういうところに時間がかかるんだ」という発見をベースに翌年以降はどのような方を派遣するか選定していくことで、会社としてより良い成果につながるという視点を持つようにしています。
河北:ありがとうございます。私たちのプログラムを通して「人の可能性に目覚める」「学んだことをすぐに職場に活用できるので上司が味方になってくれる」などとよくお褒めいただくことがあります。「いつか、なにかのためになる」と静かに勉強するのではなく、自分の今と未来を変えていくことができるプログラムなので、マインドセットなどを丁寧にサポートもしますし、知見や情報をアップデートして、社会の変化を知っていただくことを大切にしています。
なので、そのようなお声をいただけるのはとても嬉しいです。
松井さま:「そうだったんだ」という感じですね。企業のなかに勤めているひとりの自分だけではなく、それが社会に出たら価値がある存在なのかもしれない、家庭の中での家事や育児もそれ自体が価値のあることなのではないかと思えると、すべてが繋がるので、本当に行動が変わります。
実は私は、研修中盤くらいで上司から「ものすごく変わったね」というように声をかけていただきました。
今までは少しアンバランスといいますか、仕事もきちんとするしスピード感もあるけど、どこか引いているところがあるよねと上司に言われたことがありました。その上司から「変わった」と声をかけていただいたことで「上司がそう感じてくれているんだ」と思うと、さらに自分の励みになりました。自分にちゃんと価値を見出して自分がしていることをバカにしたりせず、ひとつひとつに価値を見出してやっていくと、本当に行動が変わると感じています。
河北:本当に、上司の方はちゃんと見ているんですよね。部下のみなさんの視座が上がったことを理解されているので、そこで情報を多く与えるようになったり、より頼りにするようになります。言いたいことも言いやすくなるので、リクエストも上手になるんですよね。説明ができるようになることやその際の表現力も大事ですが、上下という見方ではなく、仕事をより良くしていくためのパートナーだからというスタンスも大事ですよね。
松井さま:確かに。上司がどんなことで大変なのかというイメージが少しつくようになりました。今までの私だったら「上司に面倒をかけているな…」と思ってしまうこともありました。ですが、自分の考えが変わって、上司の意見が引き出せたな、ここまで持っていったら議論ができそうだな、という部分が見えてくると、仕事そのもののステージがひとつ上がりますよね。ちょっとやり方が変わっただけで、楽しくなって、新しいものが見つけられる、自分のやりたいことが実現できると思うと、会社自体がものすごく広いフィールドに感じられるといいますか。
マインドという点で言うと、プログラム後半のダイバーシティ成長セッションは印象的でした。受講生たちが、本音で語り合い、深いところで分かり合う場面がありました。
仕事が忙しいとお互いにギスギスしてしまい、コミュニケーションを放りだしてしまったり、傷つけ合ってしまう場面もあると思います。お互いに意識してなくても、分かり合えないと思うと距離ができてしまいますよね。でも「それってなんでなんだっけ?」というのを言うようにしようと意識していますし、立場が上がってきたメンバーに対しては特に伝えることにしています。
もちろん、それで乗り越えられない部分もありますが、行動を変えるのは自分ですし、自分を変えないと変わらないのでコミュニケーションは自分から取るようにしています。「自分に何ができるのか」を常に考えています。私自身も辛い経験をしてきたこともあったので。
河北:そうですね。だからこそ、こういった経験を紐づけて、組織全体が良くなるようなプロジェクトができたら良いですよね。今、とても良いお話を聞けて嬉しかったです。
これからネクストステップとして考えていることがあるとお聞きしました。どんなことにチャレンジしたいですか?
正路さま:今後、例えば女性管理職比率をより明確にドライブしていったとしたら、現在の男女管理職比率とは異なってくるため、様々な軋轢が生まれてくると思いますので、
どういったコミュニケーションを会社として取るかも考える必要があります。
良い意味で女性のみなさんは、活躍のフィールドに立っていく諸準備や意気込みや覚悟が準備万端になっている方が非常に多いと思います。それを阻害しているのは反対側のジェンダーだったりもするので、どういったコミュニケーションを取っていくことが、心の豊かさをパーパスとして掲げて、多様性を尊重すると宣言している企業として、最良の責任と実行なのかというところが、大きな会社の分岐点になるのか、といった点が気になっていますね。
河北:そうですね。確かにおっしゃる通り「これまではこうだったのに、どうして」という意見が生まれる可能性もありますね。社会の方向性としてのDE&Iであり、経営視点でもあります。またこれまで持っていなかった視点ということもありますから、ザワザワせずにクリアできる方法があったら良いですよね。
本学でも、最近は女性管理職候補が人選されるのではなく、次のフェーズとして、意図的に男女同数で受講する企業が少しずつ増えてきました。真の多様性を男女ともがチームとして理解納得、実感することは、組織に影響力を確実に作り出します。
正路さま:なるほど。自分の立場上、様々な反論が出てくるのは承知の上なので「このままで本当にいいの?」ということはしっかり声に出していきたいです。
そして、次世代を担っていくようなリーダー候補層の方々に受講いただいて、発信をしていくという手段は確かにありますね。可能性なども含めて、どういう形で世の中に発信していくのも同時に進めるべきなので、コミュニティのなかでどう健全な声を作っていくか、というところですね。
絡み合った糸を一本ずつどうやって解きほぐしていくのかは、おそらくいろいろな企業さんも考えていくべき課題だと思いますし、考えるよりも行動をしていきたいですね。
河北:いいですね。そういった点では外部の方との交流なども効いてくるのではないでしょうか。部分的に他流時代ができるので。私たちのプログラムを受けてくださる企業さまは、先進的な企業さまが多いので、実は企業同士で一緒になにかできたらいいなというお声もあります。ぜひそういった機会にお声がけさせていただきたいです。
正路さま:当社は他社の方のお声にとても真摯に耳を傾けるんです。業界として競合が多くないからこそ、他社さんがどんな価値観を持たれているかや、どこに喜びや苦しみがあるかといったところに非常に敏感なので、ぜひご一緒させていただきたいです。
河北:正路さま、松井さま、長時間にわたりありがとうございました。
