日油株式会社
2024年7月12日
更新日:
組織の価値観を礎とし、当事者意識を持った「自律型人材」を創出
1937年創設の化学メーカー。油脂化学メーカーとして創業し、現在では「ライフ・ヘルスケア」「環境・エネルギー」「電子・情報」の3分野にて、化粧品・食品・医薬品といった身近な商品の原料から、エレクトロニクス関連やロケット固体推進薬まで、幅広い事業領域において素材を提供
加藤 英明 様(写真左)、宮崎 洋祐 様(写真右)
実施概要:
「日油価値観を礎とする自律型人材」の育成をテーマに、全従業員(約1,700名)を対象とした対面式のワークショップを実施
課題
・新たな経営理念体系の浸透
・自律型人材の育成
成果
・仕事に対する使命感や当事者意識が生まれた
・業務の棚卸しができた
近年、ビジネス環境は急速に変化しており、人材育成の在り方も変わってきています。企業が変化に適応し成長していくためには、自律的に行動し、創造性と専門性を発揮できる「自律型人材」の育成が不可欠な要素です。
2023年に経営理念体系を改定し、自律型人材の育成施策に取り組む日油株式会社様。同年度に実施した研修について、人事・総務部 人材開発グループ グループリーダーの加藤 英明様、同グループ 主査の宮崎 洋祐様からお話を伺いました。
(部署・役職はインタビュー当時)
目 次
【導入の課題・背景】新たな経営理念体系の浸透と自立型人材の育成
【研修実施にあたって】全従業員参加型でディスカッションの活性化は可能なのか?
【研修を実施しての所感】部署や年齢の垣根を越えて、予想以上の盛り上がりに
【研修に感じる価値】従業員に強い使命感や当事者意識が生まれた
【アイデンティティー・パートナーズに感じる価値】常にプログラムの質向上に取り組む、講師陣のレベルの高さが魅力
【今後の取り組み】本取り組みを大きなテーマとして今後も施策を検討したい
導入の課題・背景
新たな経営理念体系の浸透と自立型人材の育成
――今回の研修を導入された背景について教えてください。
加藤様:
2002年に経営理念を改定してから20年以上が経過し、その間、当社グループを取り巻く事業環境と社会情勢は大きく変化しました。
このような環境下において、企業を支える土台である「人」の成長に根幹をなす経営がますます重要になると判断し、2023年4月に経営理念体系を改定しました。
私たち人事・総務部は、全従業員が新たな理念と価値観に共感し、かつ当事者意識を持って主体的に仕事に取り組む「自律型人材」になることを、研修をもって実現できないか、と考えました。
アイデンティティー・パートナーズさんとは、2022年度に新規に実施した研修でお世話になりました。その際の提案いただいた企画に強い想いが込められているのが感じられ、内容が期待以上だったことなどを踏まえ、今回もお願いすることにしました。
加藤様:
アイデンティティー・パートナーズさんにお願いした一番の決め手は、企画力でした。
私たちの期待に沿うような研修内容だったことに加えて、提案いただいた際に「なぜこのプログラムなのか」という背景や考えまで説明していただけて、理解しやすかったです。
お話していて非常に安心感があり、「実は我々はこういうことを考えているんです」とリクエストもできました。結果として良い研修になったと思います。
【担当プランナーより】
組織の価値観の浸透度は、
1「知らない」→2「聞いたことはある」→3「内容を理解している(記憶にあって喋れる)」→4「自分の言葉で語れる」→5「行動に反映されている」
とレベル1~5の段階があります。
本研修では、現状想定されるレベル2認知関心(聞いたことはある)から、レベル4意味把握(自分の言葉で語れる)の状態を目指すこととしました。
研修実施にあたって
全従業員参加型でディスカッションの活性化は可能なのか?
――研修の準備段階で懸念点はありましたか?
加藤様:
過去に行った研修は、階層別・課題別に知識を習得するような研修がほとんどで、今回の研修のように人間性に働きかける内容は経験がありませんでした。業者さんの選定をはじめとして、どのようにやっていけばいいのかという不安はありましたね。
宮崎様:
今回は、全従業員を対象とした研修で、会場や時間帯を変えて何十回も実施しました。あえて、各回に職場や年齢、階層など隔てなく参加させることにしたんです。たとえば、ベテランの部長クラスの人も高校卒業して入社して間もない人も、同じテーブルで同じ内容の講義を聞くと。
多様な従業員それぞれが関心を持って受講できる内容にするにはどうしたらいいか。企画を進めていく段階では、その点が心配ではありました。
加藤様:
これまで実施した研修では、グループディスカッションの時間を設けても、皆さん結構おとなしくて、あまり話し合いが活性化しない傾向が見受けられていました。
今回の研修では、さまざまな立場の従業員が一緒に受講する分、発言する人が少なく時間が余ってしまう…といった状況にならないようにしたいと考えていました。
研修を実施しての所感
部署や年齢の垣根を越えて、予想以上の盛り上がりに
――研修を実施してみてのご感想をお聞かせください。
加藤様:
思い切って、対面による集合型の研修として実施できたことが良かったと思っています。
グループワークでは、「組織の価値観を踏まえ、現場で実践していること」、そして「組織の価値観を活かした、これからのアクション」について話し合ってもらいました。
この議論が予想を超えて活発に行われたところは、新たな発見となりました。
宮崎様:
私も研修に参加しましたが、皆さん年齢や部署、役職に関係なく活発に話されていて、ディスカッションの時間を過ぎてもまだ話し足りなさそうなグループもあったのが印象的でした。
あとは、研修冒頭の社長の動画メッセージも参加者の反応が良かったですね。社長のお顔や声をあまり知らないという従業員もいたので、新鮮だったようです。
加藤様:
「社長が関西弁だったとは知らなかった!」という反応もありました(笑)。
社長からは、赴任される前の若いころのエピソードや失敗談なんかもお話しいただいたんです。「意外と、社長も失敗したことがあるんだと身近に感じられた」という声もありましたね。
【担当プランナーより】
2時間半のプログラム冒頭では、組織の理念や価値観を知っている状態(レベル2「認知関心」の入り口)で研修に主体的に参加できる準備を整えるために、沢村孝司社長が経営理念・価値観について語る動画を視聴する時間を設けました。
社長自らが語る姿をみることで、理念が「絵に描いた餅」ではなく、血の通った「想い」であることが伝わります。
研修に感じる価値
従業員に強い使命感や当事者意識が生まれた
――研修後の反響はいかがでしたか?
加藤様:
研修後のアンケートで「こういった研修はこれまでなかったけど、実施してくれて嬉しかった」「ぜひ今後も同じような研修を行ってほしい」というポジティブな感想が多かったことは、良い意味で予想外でした。
従業員の時間を拘束するので、批判的な意見が出ると思っていましたが、アンケートではそういった声はあがりませんでした。
宮崎様:
「管理職の人と話す機会があまりなかったけれど、今回を機に話す場が持てた」「さまざまな立場の人と話せて良かった」といった感想からもわかるように、今回のような機会を得られたこと自体が新鮮で豊かな体験になったようです。工場のメンバーも参加でき、とても良い機会になったと思います。
加藤様:
後日、「これ、このあいだの研修でやったことだね」「そっちのグループではこんな議論があったんだ」など、研修のことが従業員のなかで話題になっていたこともありました。
研修の内容が後日話題になるということは、これまであまりなかったんです。なので、そうした意味でも今回の研修は従業員にとって印象深かったのだと思います。
――「新たな経営理念体系の浸透」と「自立型人材の育成」という2つの課題に対する研修の成果はありましたか?
加藤様:
それぞれ自身の業務の棚卸しができたことは、成果の一つだと感じています。
また、これまでもいろいろなことを考えながら仕事をしていたと思いますが、今回の研修をきっかけに、より強い使命感や当事者意識が生まれたのではないでしょうか。今後は、この意識改革が業務に落とし込まれていくところを見たいですね。
宮崎様:
研修の目的が実現されることはもちろん、今回のグループワークのように、職場や役割などの垣根を越え、あらゆる場面で気軽に活発な意見交換や議論が行われるようになれば良いと感じています。
加藤様:
研修の内容や趣旨を踏まえると、効果はある程度長い目で見る必要があるかと考えています。今回の研修は、皆がしっかりと意味を咀嚼し、日常の業務において定着させてこそ実施の意義があると考えています。そのような取り組みを行っていきたいです。
アイデンティティー・パートナーズに感じる価値
常にプログラムの質向上に取り組む、講師陣のレベルの高さが魅力
――弊社の研修について、感想をお聞かせください。
加藤様:
アイデンティティー・パートナーズさんの講師陣のレベルの高さを実感しました。
こちらの期待に沿う形で複数の講師の方に担当していただきましたが、どの方も研修の趣旨を理解したうえで、その方自身の言葉でレクチャーしていただけたのが良かったです。
宮崎様:
講師の方から毎回フィードバックをいただきましたが、受講者をきちんと見ていると感じました。さらに、そこから次の案を出してくださる。
回数を追うごとにプログラムがブラッシュアップされて、次に活かそうと思ってくださったところが伝わってきました。講師の方々と良い関係性も築けたのも良かったです。
今後の取り組み
本取り組みを大きなテーマとして今後も施策を検討したい
――今後はどのような展開を考えていらっしゃいますか?
加藤様:
自立型人材の育成や会社の価値観を理解するのは1回の研修で成し遂げられるものではないので、大きなテーマとして、どうしたらより深く浸透させられるかは引き続き考えていきたいですね。
宮崎様:
知識は身につけただけでは意味がなくて、使えば使うほど良いと考えているので、さまざまな研修や学習をより早い段階で受けられるようにしたいです。
また、ダイバーシティを推進するには、外部の人との交流が非常に有効だと思います。今後は、他分野のビジネスパーソンの方々との交流や議論の場なども増やしていきたいです。
■担当プランナーからのメッセージ
インタビューの場に同席させて頂きましたが、お二人の話を伺いながら、当初のご提案の際、私たちがご提案したことに対して、加藤様や宮崎様が懸念や不安を率直に示してくださったこと。
そして、最終的には私たちのご提案に賛同頂き、このプログラムがスタートした時のことを思い返しておりました。
私としては、まさに私たちが大切だと考える対話を通して、このプログラムの内容を固めていけたことが喜びであり、常に真摯に誠実に向き合ってくださった加藤様と宮崎様とプロジェクトをご一緒できたことに大変感謝しております。
そして、加藤様や宮崎様だけでなく、日油様の各拠点のご担当者様、プログラムに参加された全従業員皆様の理解や協力に改めてお礼申し上げます。
今後は、今回のプログラム実施を通して触れることのできた社長様をはじめとした従業員の皆様一人ひとりの想いに応えられるよう、私たちも想いを新たにして、これからも日油様の人と組織の可能性を解き放ち、日油様が目指す未来に近づいていけるよう、引き続き伴走させて頂きます。