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株式会社足利銀行

2025年6月10日

​​更新日:

「女性活躍」という概念自体がなくなるのがひとつの区切り

株式会社足利銀行
人事部 ダイバーシティ推進室 室長 秋葉 陽子 氏
人事部 次長 荒井 氏

貴社の企業や社員育成に注力しているポイントはありますでしょうか?


秋場さま:中期経営計画に基づいて価値創造をする人材の育成に注力しています。

特にダイバーシティ推進室としては、女性の活躍機会拡充・上位職登用に向けた取組強化を図っています。その一環として、「女性が広い視野を持って学べる」機会として貴学への派遣を開始しました。リーダー層として必要なビジネススキルの習得、社会的な動向・トレンドを把握しビジネスに落とし込んでいける力の習得を目的としています。


導入前の目標及び課題 ご検討されていた際に感じられていた課題やきっかけはありますか? ご検討されていくなかで、どのようなプログラムが理想だとお考えでしたか?


秋場さま:ダイバーシティ実践の中で女性活躍の機会を拡大し、伝統的に女性がやっていた業務から幅を広げていくためにも、多様な価値観に触れる機会、社会動向を学んでいく機会を作りさらに視野を広げていくことが必要だと感じました。他の銀行との交流の場は今までもありましたが、異業種かつ女性のリーダー層という同じ志を持つ方との交流はあまりありませんでした。導入にあたっては、自分自身でプレ入学を経験しました。自らがプログラムを通して視野が広がったと実感できたこと、それが導入の決め手です。


荒井さま:私自身が30代の頃は、男性と比較すると女性が学ぶ機会が非常に少なかったように思います。また、それまでの研修のイメージはどうしても業務に直結するものがメインだったので、 リーダーとしての考え方や広い視野を持ってマネジメントする機会がなかったことも影響しているのかと。そういったこともあって、プレ入学では全てが新鮮に感じました。

こういった研修の場があるのなら、銀行内に広めていきたいと感じましたね。行員の男女比率はほぼ同じですが、圧倒的に上位層を目指すことを前向きに捉えている女性は少ないです。業務経験だけに留まらず、高い視野に立って全体を見渡せるスキルが必要ですし、受講で考え方が変わるきっかけがあれば良いなと思いました。


秋場さま:多様な講師陣、多様なテーマで学べるプログラムがとても新鮮でした。多様性を確保すること、お客さまの多様なニーズに応えるには、自身が多様な知識やスキルを身に付ける必要があると実感しました。プレ入学をしてみて、自分の視野が職場から社会に広がっていく感じがありました。グループワークでは異業種の方との意見交換を通し、業種の違いによって課題認識の視点が違うということも実感しました。課題認識に対する視野がぱっと広がる感覚がありました。とても良い経験でしたね。このように、プレ入学を通して、多様な人との関わりの重要さを強く感じましたね。参加者が多様な方との交流を通し、様々なことを学び、自分なりのリーダー像をつくっていけるのではないかと感じました。





取り組みやサービスのどんなところに魅力を感じられましたか? 取り組みの進め方などはいかがでしたか?


荒井さま:秋場も同様に感じているのですが、クリスティーナ氏の講義が魅力的でした。世代的に同じということもありますが、外国籍で日本で働くことが認められないなかでキャリアを積んできた点が、さまざまな考え方を持っていくべきことを思い知らされたし、感銘を受けました。


秋場さま:私は渡辺パコ氏の「社会のダイナミズムと未来を見通す力」という講義にとても感銘を受けました。日常の中で、社会を見通していく力が必要です。そこに興味を持つこと、起こっていることが将来を作っていくので、将来を点ではなく線で繋げて見て、予見する力が必要だと。

グループワークで、同じグループにきのこの製造企業さんから参加している方がいました。その方の感じている課題は、とても壮大で驚きました。地球温暖化をきのこの成長過程の変化から実感されていて、今後の事業展開をどうすれば良いのか、というような課題を持っていました。未来を見通した発想だなと感じました。

こういった視点や考え方が、講義の中に落とし込まれていたと思います。これからの激しい変化の時代において、こういった視点が益々必要になると思い、若手行員向けにもこういった研修コンテンツとしてもとても魅力的であると感じました。


当プログラムを導入してみて、変化を感じられたことはありますか?


秋場さま:前回派遣した2名は「視野が広がり、学んだことを部下や後輩に還元しながらみんなに分けていきたい」と言っていました。リーダーになるということを前向きに捉え、主体的にチャレンジすることに繫がりますし、何よりもスキルにも自信がついたように見えます。周囲の仲間の背中を押してくれるような影響力にも繋がっていくと感じました。

また、現在派遣しているメンバーは、本プログラムの受講を家族会議を開いてまで前向きに検討してくれました。今も楽しく研修を受けていると聞いています。 「管理職を目指したいと思わなかったけど、思えるようになった」という気持ちの変化もあったようです。ワンステップあがって、視野が広がる。自分の成長を実感できたことが、プログラムの魅力ですね。

プログラムのひとつひとつが個人の内面にもフォーカスされ、自信がなかったメンバーに対しても、一歩前に踏み出せるような刺激を与えてくれる気がしています。内省しないと次に進めないので。つい仕事や家庭が忙しく、自分に対しての振り返りの機会が少なくなってしまいがちですが、「今の自分はどうなのか」「これからどうしていきたいのか」と考える機会を与えてもらい、前向きになるきっかけになっています。そういう機会が多いことも価値があったと思います。

受講者が自己開示をできるようになったり、コミュニケーションを活発に取るようになったりというところもありました。人に頼ることや自己開示をすることに躊躇する方も多いと思うのですが、言語化することで、心の整理ができるようになったみたいです。


社内での受講者へのアフターフォローなどはどのような取り組みをされていますか?


秋場さま:こちらから直接的なフォローはしていないものの、その後キャリアアップを実現しているメンバーがいるので、目に見える効果として現れていると感じています。受講したメンバーが営業数字を牽引するような動きをしているという支店長からの報告もありました。支店長からそういったコメントがあがってきたのは、嬉しかったです。

行内で女性行員の育成プログラムを実施する中で、河北学長より本講座のご紹介をしていただきました。次は、実際に受講したメンバーから、体験談を伝えてもらいたいと考えています。

また、今回導入した講座以外にも、さまざまな研修コンテンツをご紹介いただいているので、マーケティングや経営戦略等リーダーとして必須の分野については個別にコンテンツを導入したいと考えています。


今回は女性社員の育成にフォーカスされていますが、男性社員向けに実施されていることは何かありますか?


秋場さま:若手行員に対しては、男女関係なく、キャリアについて考える研修を行内で実施しています。その中で、「ビジネスモデル思考」や「社会のダイナミズムと未来を見通す力」を導入しています。他社の研修コンテンツも入れながら、多様な研修テーマから、自分が必要なものを選択できるような仕組みです。

特にここ数年の新卒行員は、キャリアに関する講義を大学で受けていますし、自分が社会に出てどう貢献するかを考えています。キャリアビジョンと働き方を一致させるような動きがあるように思えます。ひとりひとりのキャリアにフォーカスしつつ、自律的に学ぶ場を提供していきたいです。

どこまで理解できているか、浸透できているか、といった点は課題があると思いますが、やり続けていくことが大切ですし、継続して意識を根付かせて高めていきたいです。


荒井さま:研修は1日受けたからといって考え方が変わるものではないので、継続することの重要性を感じています。業務から切り離して学ぶ機会や内省する時間、自分を大切にする時間は必要です。テーマ選択で学んでいることが業務に結びつかなくても、数年後に活かされていると気付くときが絶対にあると思うんです。


秋場さま:振り返るとキャリアは繋がっているので、ひとつひとつのきっかけを大切にしてほしいと思います。業務だけではなく、キャリア形成に必要なスキルを一つ一つ身に付けて、自分らしいキャリアを作ってもらいたいです。

荒井は受講後、影響を受けて積極的に本を読んだりしているんですよ。本プログラムを受講したことで、刺激を受けて身を持って変化を実感していると思います。


荒井さま:私は子どもが小さいので、時間の使い方で「1日30分だけ時間を作る」を目標にしたんです。それを受講時に話した際に「15分でもいいよ」と言われて、この1日30分という目標が、自分のなかでどれだけ大きな決意だったかに周りが気づいて、声をかけてもらえたことが嬉しかったんですよね。





今後、さらに意識改革や社員育成をアップデートしていくのに向けて、ネクストステップとして何かお考えになっていることはありますか?


秋場さま:女性登用については中期経営計画でも定めていますが、そこが達成されてきたら、女性が議論の場に、テーブルについて、しっかりと自分で考えた意見を発信できるようさらにしていきたいです。そのためには、自分という人間の考え方を固めていかないと自信を持って社内に発信ができないと感じることがあります。

これからも、後輩たちがより輝く今後を考えていきたいと思っています。自分も育児との両立が難しく感じる時がありました。働き方をさらに柔軟にしていきたいとも考えていますし、女性には自身での努力も重ね続け、意思を持って意見発信していくようになってほしいです。


荒井さま:風通しが良い、自分の意見が発信できる、というのに越したことはないんです。ただ、伝え方などによっては勘違いされてしまうこともあるので、バランスが難しいですよね。発信することを躊躇する人は「否定されるのではないか?」「本当に言って大丈夫なのか?」と思っている人は少なくないですし、意見を強く言う人がいたりすると、そこに従うような傾向もあるんだと思います。


ネクストチャレンジに向けて、秋場さんや荒井さん主導で何か心がけていることはありますか?


秋場さま:次のステージに向けて、解消していかなくてはいけないことは、沢山あります。なるべく発信や企画をする際には、「なぜそれが必要なのか?」という背景や根拠を集めて、説得できるような形で進めるようにしています。小さな「Yes」を積上げながら、進めようと心がけています。まだまだ自分自身、課題も山積みで、時には反対意見や厳しい意見をもらう機会もありますが、反省と内省を繰り返して、進んで行こうと心がけています。


荒井さま:秋場はダイバーシティ推進室の初代室長で、さまざまなものを形にしてきています。何をやって良いかわからないところから創り上げてきているので、きっと行員たちはそういった姿を見て信頼していると思いますよ。


最後に、何かロードマップ的に描いているものや、理想形だと思うイメージなどはありますか?


秋場さま:私が考える理想のイメージは、「女性活躍」という概念自体がなくなるのがひとつの区切りだということです。このイメージを実現するために、女性キャリア形成基本方針を制定し今年度から進めています。


荒井さま:そうですね。女性活躍という言葉がなくなる日まで、女性活躍がどこまで浸透しているのかをイメージすると、「管理職の固定席に女性が当たり前に座っている風景」ですかね。数をはじかないと出ない女性活躍ではなくて、視界に入る、目に見てわかる、といった状況に世の中的になっていくと良いなと思っています。


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