【産業・組織心理学会で研究発表】ビジネスパーソンに求められる対話力の要素
2024年10月8日 3:00:00
~ビジネス現場における「対話力」6要素を抽出。先行研究の5因子に新たに加わったのは「創造性」~
組織で働く方々の「対話」を通じ、組織の活性化を促す研修・コンサルティング・スクール等のソリューションを提供するアイデンティティー・パートナーズ株式会社(以下、IDP。本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:北口 浩士)のシンクタンク「わたし・みらい・創造センター」(以下、WMSC)が、産業・組織心理学会第39回大会にて研究発表した「実践報告-ビジネス現場における対話力アセスメントの作成に関する報告-」の概要を公開します。
■産業・組織心理学会について
個人や集団が成長し、効率的かつ健康的で生きがいのある組織を形成し、文化的生活者として消費できる条件を探究することを目的に1988年に設立されました。
研究分野は人事、組織行動、作業、消費者行動の4部門で、大学や企業、団体などから幅広い研究者や実務家の参加を得て、産業・組織の諸問題に取り組んでいます。
【産業・組織心理学会第39回大会】
2024年8月31日・9月1日 開催
■研究について
【研究の背景】
21世紀に入り企業をとりまく環境が厳しくなるなか、企業が生き残るためには「イノベーション」が求められます。イノベーションを起こすには、ビジネスパーソンが内外の人から有益なアイデアを得て、お互いの考えの違いを明確にし、対立から新たなものを創り出す「対話」が重要です。
企業はビジネスパーソンの対話能力を開発するため、コーチングや研修を行う必要性が高まっています。それらの基礎となるデータを提供すること、データの裏付けとなるアセスメントの作成が必要だと考え、本研究を行いました。
【先行研究】
2019年3月から2022年まで、フィンランドで開発された「オープンダイアローグ」に基づく対話セッションを実施し、音声データを収集・分析しました。
その結果、効果的な対話の土台となる5つの因子(①論理性、②率直さ、③表現のシンプルさ、④表現の明快さ、⑤表現のわかりやすさ)を抽出しました。
【研究概要】
2023年6月から11月まで、6回の対話セッションを実施し、映像と音声データを収録しました。
アセスメントAではAIによる言語分析、アセスメントBでは先行研究の5つの因子に基づくリッカート法によるアセスメントを作成し、自己評価、相互評価、WMSC研究員による第三者評価を行いました。(サンプル数:179件)
【研究結果】
アセスメントBの探索的因子分析の結果、6つの因子(論理性、創造性、明快性、伝達力、親和性、一貫性)が抽出され、先行研究の5因子にはなかった「創造性」が新たに加わりました。
6つの因子については、アセスメントBで設定した質問内容をもとに、4名のWMSC研究員で議論を行い、それぞれに名称を付けました。
因子1. 論理性 適切な言葉を選ぶ、的確に話す能力因子2. 創造性 ものごとを多面的に見る、洞察を生み出す能力因子3. 明快性 わかりやすく簡潔に表現する能力因子4. 伝達力 伝わりやすく話す能力因子5. 親和性 相手を尊重する能力因子6. 一貫性 矛盾なく主張する能力
【結論】
先行研究の5因子と今回の6因子を比較すると、「創造性」が新たに加わりました。
アセスメントBにおいて、他者と積極的にかかわり、新しいアイデアを生み出そうとする対話姿勢が、新たな因子であるとして抽出されました。
WMSC研究員が議論したなかで、「その対話姿勢は、創造性を喚起する働きを持つのではないだろうか」という新たな知見が得られました。
■学会発表者
風早伸彦、松下信武、廣田由章、頼木康弘(アイデンティティー・パートナーズ(株) わたし・みらい・創造センター)
岡田陽平(SBI ホールディングス(株) 社長室ビッグデータ担当 兼 SBI 生成 AI 室)
佐々木研一(早稲田大学大学院文学研究科)
■今後の展望
研究の今後の課題は、アセスメントBの確認的因子分析と妥当性検証、アセスメントAとBの相関検証、対話能力とイノベーションの関係検証、対話能力を伸ばすトレーニングプログラムの開発です。
当社IDPは研修・コンサルティング・ビジネススクールの事業を展開しています。根底にあるのは、働く方々の「対話」を通じ、組織を活性化させ、ひいては社会全体を元気にしていきたい、という思いです。
IDPの企業教育総合研究所「わたし・みらい・創造センター」が目指すものは、
「創造性」を明確に定義し、実装していく方法の研究
「価値のある対話」を生み出す能力を伸ばすための研究開発
です。
今回の研究をもとに今後の研究をより深め、当社・当研究所もより大きな社会貢献ができるように努めてまいります。