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管理職に求められる戦略思考とは?事業を構造で捉える「ビジネスモデル思考」

  • 4 時間前
  • 読了時間: 8分


現場での実績を積み重ね、管理職に昇進した方の多くが、あるタイミングで壁にぶつかります。それは「自分の判断が、会社全体の業績にどうつながっているのか」を説明できないという壁です。

プレイヤーとして高い成果を出してきた人ほど、目の前の業務を最適化する力には長けていますが、事業全体を俯瞰し、経営層と同じ言葉で議論する力は、意識して鍛えなければ身につきません。

本記事では、管理職に戦略思考が必要とされる理由を整理したうえで、その土台となる「ビジネスモデル思考」という考え方を解説します。フレームワークの暗記ではなく、自社の仕組みを構造的に理解することがなぜ重要なのか、現場の具体例を交えてご紹介します。


【 目 次 】

管理職に「経営視点」が求められる理由

プレイングマネージャーが陥る「経営視点の壁」

戦略思考は「フレームワークを使うこと」ではない

事業構造を捉える「ビジネスモデル思考」とは

ビジネスモデル思考を実践するためのステップ

まとめ

FAQ


管理職に「経営視点」が求められる理由


管理職不足・経営人材不足は一過性の問題ではなく、多くの企業に共通する構造的な課題として調査データに表れています。

帝国データバンクが実施した「リーダー人材不足に関する企業の意識調査」(2025年)では、有効回答企業のうち67.8%がリーダー人材(管理職相当以上)の不足を感じているという結果が出ています。同調査では、人手不足に加えて現場負荷の増加により、次世代リーダーの育成に十分な時間を確保しにくい状況も指摘されており、管理職不足は構造的な経営課題として位置づけられています。

また、リクルートマネジメントソリューションズが人事担当者・管理職層300名を対象に行った「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2025年」でも、人事・管理職の双方で70%以上が管理職に関する課題感を持っており、課題の具体的な内容としては「管理職候補の不足」の選択率が人事46.8%、管理職46.6%とほぼ同水準で最も高くなっています。



なぜ「現場で成果を出せる人」と「経営視点を持てる人」は別物なのか

現場での意思決定は、多くの場合「担当領域のなかでどう最適化するか」という範囲にとどまります。


一方で経営視点とは、

  • 自社の事業が何によって利益を生んでいるのか

  • どの資源(ヒト・モノ・カネ・情報)にどれだけ依存しているのか

  • 自分の部署の意思決定が、他部門や会社全体にどう波及するのか

を理解したうえで判断する視座です。


現場経験の豊富さは前提条件にはなりますが、それだけでは経営視点は自動的に身につきません。むしろ、現場で最適化された「部分最適」の発想が強いほど、全体構造を見る視点への転換に時間がかかるケースも見られます。



プレイングマネージャーが陥る「経営視点の壁」


多くの管理職はマネジメント業務とプレイヤー業務を兼務しており、その負荷の高さが戦略を考える時間そのものを奪っています。

リクルートマネジメントソリューションズの「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」によると、管理職がマネジメント業務に携われている比率について、最も多かった回答は「50%」で選択率20.7%という結果でした。90%や100%といった大半の時間をマネジメント業務に割けている人は少数派であり、多くの管理職が実務者としての役割も同時に担っていることがわかります。

同調査では、管理職層がプレイヤー業務を担う理由として「メンバーに知識・スキルが不足しており仕事を一任できない」が最多として挙げられており、育成が追いつかないまま管理職自身が現場業務を抱え込む構図が見えてきます。


現場でよくある光景

  • 週次会議のほとんどが「今月の数字」の確認で終わり、半期後・1年後の事業の話に及ばない

  • 部下の育成に追われ、自部署の戦略を言語化する時間が取れない

  • 経営会議で「なぜその施策が必要か」を全社視点で説明できず、現場目線の説明に終始してしまう


これらは個人の能力の問題というより、業務構造上、戦略を考える時間そのものが確保しづらいという要因が大きいと考えられます。だからこそ、限られた時間の中でも経営視点を養える「型」を持つことが重要になります。



戦略思考は「フレームワークを使うこと」ではない

戦略思考とは、3C・SWOTなどの分析ツールを使いこなす技術ではなく、自社が価値をどう生み出し利益に変えているかを構造的に理解する思考様式です。

「戦略思考を身につけましょう」と言われると、多くの方はSWOT分析や3C分析、ファイブフォース分析といったフレームワークの習得をイメージします。もちろんこれらは有用なツールですが、フレームワークを覚えることと、戦略的に考えられることは、必ずしもイコールではありません。


フレームワークは、あくまで「思考を整理するための箱」です。箱の使い方を知っていても、そこに入れる中身、つまり自社の事業構造についての土台となる理解がなければ、分析結果は表面的なものにとどまります。


たとえば「競合分析をしてください」と言われて、競合の商品やサービスの比較はできても、

  • 自社がその競合に対して、どの経営資源で優位性を築いているのか

  • その優位性は、どの利益の流れ(バリューチェーン)から生まれているのか

まで踏み込んで説明できる管理職は、決して多くありません。これは知識不足ではなく、「自社を構造として捉える訓練」を受けていないことが要因だと考えられます。



事業構造を捉える「ビジネスモデル思考」とは


ビジネスモデル思考とは、自社がどのような仕組みで価値を生み、利益につなげているかを構造的に理解し、自分の業務と経営戦略を結びつける考え方です。


ビジネスモデル思考では、

  • 自社が「誰に」「どのような価値を」提供しているのか

  • その価値は、どのような経営資源・活動の連鎖(バリューチェーン)によって生み出されているのか

  • その仕組みが、どのように収益・利益へと変換されているのか

という一連の「構造」を捉えます。戦略のフレームワークが「分析の手順」だとすれば、ビジネスモデル思考は「分析の対象そのものを正しく理解するための地図」にあたります。


なぜ「自分の仕事」と「経営戦略」がつながって見えるようになるのか

自社の事業構造を理解すると、自分が担当している業務が、バリューチェーンのどの部分に位置し、どの経営資源に依存し、最終的にどのような利益に貢献しているのかが見えてきます。


これにより、

  • 自部署の施策が全社の利益構造にどう影響するかを説明できる

  • 経営層への提案時に、現場の実感と全社戦略を接続した言葉で語れる

  • 他部門との連携で、相手がどの価値創造プロセスを担っているかを踏まえた対話ができる

といった変化が起こります。


実際に、ある大手専門商社の管理職層を対象とした事例では、ビジネスモデル思考を学んだことで「自社を語れなかった管理職が、事業を語れるリーダーに」変化し、自部署の枠を越えて他部門との連携や価値創造を見据えた発想が生まれたという報告もあります。

これは、フレームワークを追加で覚えたからではなく、自社という対象そのものへの理解が深まったことによる変化だといえます。



ビジネスモデル思考を実践するためのステップ


ビジネスモデル思考は、部門を越えた対話を通じて言語化することで初めて実務に定着します。

ビジネスモデル思考を身につけるうえで、実践的に取り組みやすいステップは次のとおりです。


1. 自社の価値提供の構造を書き出す 誰に、何を、どのような資源を使って提供しているかを言葉にする


2. 自部署の位置づけを確認する バリューチェーンのどの工程を担っているかを整理する


3. 他部門の役割と接続させる 自部署の成果が、他部門のどの活動と連動しているかを確認する


4. 対話を通じて言語化を検証する 一人で完結させず、部門を越えた対話の中で認識のズレを確認する


特に4つ目の「対話」は見落とされがちですが、資料を読んで理解したつもりの内容が、他部門の視点から見ると解釈が異なっているケースは少なくありません。部門横断の対話を通じて共通言語を作ることが、ビジネスモデル思考を組織に定着させる鍵になります。


こうした学びを体系的に提供する取り組みとして、アイデンティティー・パートナーズ株式会社では「ビジネスモデル思考プログラム」を提供しています。 MBAの講義を土台に自社の経営資源やバリューチェーンの優位性を改めて捉え直し、部門横断のワークショップ型対話を通じて、管理職層が「自社を語れるリーダー」へと変化していくことを目指す内容です。自社の構造を体系的に学び直す機会として、研修設計の一つの選択肢になります。



まとめ

管理職に求められる戦略思考は、フレームワークを使いこなす技術ではなく、自社がどのような仕組みで価値を生み、利益につなげているかを構造的に理解することから始まります。 現場経験が豊富な管理職ほど、部分最適の視点に慣れているため、意識的に全体構造を捉える訓練が必要です。 ビジネスモデル思考は、その理解を深め、自分の業務と経営戦略を結びつけるための実践的な考え方といえます。



よくある質問(FAQ)

Q1. 戦略思考とビジネスモデル思考は何が違うのですか? 

戦略思考は、市場環境や競合との関係の中で「どう行動すべきか」を検討する思考です。ビジネスモデル思考は、その前提となる「自社がどのような仕組みで価値を生み、利益を得ているか」という構造理解にあたります。ビジネスモデル思考は戦略思考の土台となる考え方です。


Q2. 現場経験しかない管理職でも身につけられますか? 

はい。むしろ現場での実務理解は、ビジネスモデル思考を身につけるうえで強みになります。自部署の業務内容と、会社全体の価値創出の流れを結びつける視点を加えることで、現場経験がそのまま経営視点に転換されます。


Q3. 独学でも身につけられますか? 

自社の資料を読み込むことである程度の理解は可能ですが、部門を越えた対話を通じて認識をすり合わせるプロセスが重要です。他部門から見た自部署の役割を知ることで、独学では気づきにくい構造のズレを修正できます。



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