学びなおしやリスキリングの必要性が叫ばれるなか、社会人向けのビジネススクールが増えています。
社会人のためのビジネススクールは種類や費用などさまざまで、どこを選んでよいかわからないと悩んでいる方も多いでしょう。
本記事では、社会人のためのビジネススクールの選び方や最新のトレンドについて解説します。
【 目 次 】
社会人がビジネススクールを選ぶべき理由
社会人がビジネススクールに通うと、キャリアの成長において多くのメリットがあります。
忙しい社会人だからこそ、自分の目的やライフスタイルに合ったビジネススクールを選んで効率的に学習や資格取得を達成する必要があるのです。
ビジネススキルの習得や昇進、人脈の構築に焦点を当て、ビジネススクールを選ぶべき理由について詳しく解説します。
ビジネススキルの習得がキャリアに与える影響
ビジネススクールで得られるスキルは、キャリア全体にわたる大きな強みとなります。
社会人になってしまうと、日々の業務で忙しく、実務を優先してしまい、専門的な知識を学ぶ時間がありません。ビジネススクールで、経営戦略やファイナンス・マーケティングなど、実務に直結する知識を体系的に学ぶことで、キャリアアップが期待できます。
また、これらのスキルは、プロジェクトでリーダーシップを発揮する場面や、新たな事業を提案する際にも役立ちます。ビジネススクールでの学びがキャリアに直接影響を与え、企業内での評価や昇進につながることも少なくありません。
大企業での昇進とキャリアパスの拡大
ビジネススクールで学んだ内容は、大企業における昇進やキャリアパスの拡大において特に有利に働きます。
大企業の管理職やエグゼクティブレベルになると、戦略的思考や経営的視点が求められます。ビジネススクールで習得した知識は、大企業での昇進において大きなアドバンテージとなるでしょう。さらに、グローバルビジネスに対応する能力や異文化理解の深化も、キャリアの幅を広げ、新たな挑戦の機会をもたらします。
ビジネススクールのなかには、仕事上では専門的に学ぶのが難しい、リーダーシップやコミュニケーションスキルなどを磨くことができるものもあり、管理職やエグゼクティブを目指す人にはおすすめです。
ビジネススクールで得られる人脈とその活用法
ビジネススクールは、さまざまな業界や職種から集まった社会人と出会える貴重な場です。ここで築かれる人脈は、単なる同窓生の枠を超え、ビジネスパートナーや新たな顧客、さらには未来の上司や同僚になる可能性があります。
また、ビジネススクールでの人脈は、業界内での情報交換や共同プロジェクトの機会を提供するなど、ビジネスの成功を支える重要なリソースとなります。これらのつながりは、卒業後も続き、長期的にキャリアを支える資産となるかもしれません。
社会人向けビジネススクールの種類
社会人向けのビジネススクールは多くありますが、プログラムやタイプによっていくつかの種類に分類できます。
社会人向けビジネススクールの種類について3つの点に分けて解説します。
特定の資格や職種・業界に特化したプログラム
ビジネススクールの種類分けとして最も一般的なのは、特定の資格取得や職種・業界に特化したプログラムによる分類です。
マネジメントから財務まで、広範囲にビジネススキルを習得できる「MBA」のほか、「簿記」「FP」などの財務・会計系の資格、「ビジネス実務法務検定」「司法書士」などの法務系の資格、ITスキル系の資格など、さまざまな資格が取得できるビジネススクールがあります。
また、特定の職種や業界に特化したプログラム、不動産鑑定士や社労士などの専門資格を学べるビジネススクールのほか、最近では、マネジメントやコーチングなどに特化したプログラムのビジネススクールも人気です。
オンラインか通学か
ビジネススクールには、オンライン形式と通学形式があります。
オンライン形式は、場所や時間に縛られずに学べるため、忙しい社会人にとって非常に便利です。自宅や職場から受講できるため、仕事や家庭のスケジュールに合わせて柔軟に学習を進められます。
一方、通学形式は、講師やほかの受講生と直接交流する機会が多く、ディスカッションを通じた深い学びやネットワークを得られるのが特徴です。
どちらの形式にもメリットがあり、自分のライフスタイルや学習目的に合った形式を選ぶことが大切です。
大学開講のビジネススクール
近年では、多くの大学が社会人向けのビジネススクールを開講しています。
MBAプログラムを提供する一流大学のビジネススクールとしては、一橋大学・早稲田大学・慶應大学などが有名ですが、東京だけでなく地方の大学を含め、多種多様なプログラムを提供しています。
大学開講のビジネススクールは、大学が持つ豊富なリソースや、教授陣の質の高さが魅力です。さらに、同窓生ネットワークが広がることで、卒業後のキャリア形成にも役立つでしょう。
一流大学のMBAプログラムは、フルタイムでの学習が求められる場合が多く、費用も高い傾向があります。今後のキャリアプランや費用対効果をよく検証してスクールを選ぶようにしましょう。
社会人向けビジネススクールの選び方
社会人向けビジネススクールの選び方には、いくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、受講料や費用対効果、取得できる資格、授業形式の3つの視点からビジネススクールを選ぶ際のポイントを解説します。
受講料と費用対効果を比較するポイント
社会人向けビジネススクールを選ぶ際に誰もが気になるのは、受講料とその費用対効果でしょう。
ビジネススクールの受講料は数十万円から数百万円におよぶ高額なものまであります。投資額が自身のキャリアにどれだけのリターンをもたらすかを冷静に判断することが重要です。
ただなんとなく費用が安そうなところを探すのではなく、修了後に期待される年収の増加や、昇進の可能性などを考慮し、支払う価値があるかどうかを見極めましょう。逆に、相当の年収アップや昇進が見込めるのであれば、数十万、数百万円の費用を払う価値は十分にあります。
また、費用対効果を検証する際には、教材費や入会金など受講料以外の費用がいくらかかるのかにも注意してください。
MBAなど資格取得にこだわる
ビジネススクールに通うことで資格が取得できるかどうかも、選び方の重要なポイントです。
MBAは、キャリアアップに大きな影響を与えるとして、社会人に人気の資格ランキングでは常に上位にある資格です。また、特定の分野に特化した資格、たとえばファイナンスやマーケティングの専門資格なども人気があります。
特定の資格取得を目指してビジネススクールに通う場合には、まずその資格が本当に自分のキャリアアップに必要なのかをよく見極めましょう。漫然と資格がとれたほうが良さそうだから、とスクールを選ぶのはおすすめしません。
資格の必要性や費用対効果をよく検証したうえで、特定の資格取得を目的とする場合には、資格取得に強いスクールを選んでください。
社会人向けビジネススクールについての最新トレンド
社会人向けビジネススクールの最新トレンドをみてみましょう。
MBAは日本国内の一流大学の受験倍率が上昇傾向
企業が求める新しいITスキルはデータ分析や統計などにシフト
管理職のリスキリングとしてリーダーシップやコーチングのスキルなどのニーズも増加
一つずつ順番に解説していきます。
MBA受験の動向
社会人向けのビジネススクールのなかでも人気のあるMBAですが、アメリカではMBAを受験する人の数が4年連続で減少しています。MBAの資格取得者数が増え資格取得の費用対効果が薄れていること、カナダやアジア新興国のスクールが興隆していることなどが理由と考えられます。※
日本国内のMBA受験者総数のデータは確認できませんでしたが、一橋・早稲田大学など一部の一流大学ビジネススクールのMBA受験倍率は上昇傾向にあるようです。
早稲田ビジネススクールMBAの合格倍率は2.0倍から3.7倍(2023年9月期→2024年4月期)に、一橋ビジネススクールの合格倍率は3.09倍から3.85倍(2023年冬期→2024年冬期)にアップしています。※※
企業が求めるITスキルはデータ分析や統計にシフト
近年DX推進に取り組む企業が増えるなか、高度な専門性を持ったデジタル人材を獲得する戦略として、「リスキリング」の必要性を重視している企業が増えています。
アンケートによると、「リスキリングに取り組む必要がある」と答えた大企業の割合は8割を超え、IT関連で求めるスキルでは「データ分析・統計」が最多で6割を占めました。※
IT関連のスキルでは、以前はプログラミングやマイクロオフィス機能に関連したスキルが人気でしたが、最近ではデータ分析や統計に加え、AIスキルなどのニーズも高まっています。
管理職のリスキリング
リスキリングの波は、管理職やマネジメント層にも押し寄せています。
リクルートの「企業の人材マネジメントに関する調査2023」では、企業の人事担当者の約4割が「管理職に関する制度変更・方法の見直し」の必要性を実感しているとの結果が出ています。
なかでも、「管理職の課題」として挙げられているのが「人材育成」や「部下のモチベーション向上」です。※
若年層の労働力不足やダイバーシティの増加、働き方の多様化などにより、管理職やマネジメント層にもリーダーシップやビジネスコーチングなどのスキルが求められています。
社会人向けビジネススクールについてのQ&A
社会人向けビジネススクールについてよくある質問をQ&A方式でまとめました。
高卒社会人で働きながらビジネススクールに通いたいのですが?
大学卒業資格が必要のない資格や講座であればまったく問題ありませんが、社労士など一部の資格は、受験資格に大学卒業を条件としているものもありますので注意してください。
社会人向けビジネススクールで人気のMBAは、受験資格として4年生大学を卒業することを条件にしている学校が多く、高卒でいきなり受講するのは難しいかもしれません。
ただし、一部の大学系のビジネススクールなどでは、一定の資格審査を条件に高卒でも出願可能なところもあります。
たとえば、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)の修士課程MBAプログラムでは、22歳以上で所定の入学資格審査を受け、大学卒業者と同等以上の学力があると認められた場合は応募が可能です。※
条件や資格審査の内容はスクールごとに異なりますので、よく確認してください。
社会人向けのビジネススクールに費用を抑えて通うにはどうしたらよいでしょうか?
ビジネススクールの費用は数万円から数百万円単位までさまざまですが、一般的に通学よりはオンライン講座のほうが費用が抑えられる傾向があります。
また、社会人向けのビジネススクール講座のなかには、厚生労働省が実施する教育訓練給付制度が利用できるものが多くあります。教育訓練給付制度は、社会人の能力開発やリカレント教育を後押しするための制度で、厚生労働省の指定する講座を受講すれば、受講費用の20~50%がハローワークから給付されます。
このほか、企業や自治体によって助成金や大学の講座で奨学金を利用できることもあります。
文部科学省が社会人の学びのために開設しているポータルサイト「マナパス」では、教育訓練制度など社会人の学びのための経済的支援がまとめられていますので参考にしてください。
夜間通学ができる社会人向けビジネススクールはありますか?
社会人向けのビジネススクールは、働きながら通えるよう夜間クラスを設けているところが多くあります。土日や祝日に集中的に講義を受けられるところなどスクールによってさまざまです。
修士課程を修める必要があり受講時間が長いMBAプログラムも、一部の大学では夜間講座を実施しています。たとえば、一橋大学のビジネススクールのMBA修士課程の授業時間帯は18:20~22:00と、社会人が働きながら夜間通学が可能です。※
【まとめ】社会人向けビジネススクールは費用対効果をよく検証しよう
社会人のためのビジネススクールの種類や選び方について解説しました。
働きながらビジネススクールに通うのは大変ですが、キャリアパスや人脈構築などメリットも多くあります。
ビジネススクールを選ぶ際には、今後のキャリアプランとスクールに通う費用対効果をよく検証することが大切です。
企業が求める人材やスキルは大きく変わってきていますから、トレンドを見極めて必要かつ効果的なスキルや資格を取得するようにしましょう。
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