人事評価制度は、生産性の向上や社員のモチベーション向上などの効果をもたらしてくれます。しかし実施するとなると、「どのような評価制度があるのだろう?」「制度の作り方がわからない」などわからないことが多いかもしれません。
そこで今回は、人事評価制度の概要や種類、作り方まで徹底解説します。運用時の注意点も併せて紹介するので、参考にしてみてください。
【 目 次 】
人事評価制度とは?概要や目的を解説
まずは、人事評価制度の概要や目的を見ていきましょう。
概要
人事評価制度とは、社員一人ひとりの働きぶりを査定し、昇進・昇給などその人に応じた評価を与えるものです。人事部や直属の上司が定期的に評価を行います。
人事評価制度は、等級制度・報酬制度・評価制度の3種類で構成されています。
等級制度:能力や役割・職務レベルを定めるもの。
報酬制度:給与や賞与、休暇、表彰などの報酬を定めるもの。
評価制度:スキルや貢献度を評価するもの。
「課長になるには等級4以上が必要」と基準を作ることで、昇進などを客観的に決定できるようになります。評価の指標が明確で人事や上司の主観だけで判断されることがないため、社員との合意も取りやすくなります。
目的
企業としての方向性を理解してもらうため
人事評価制度は、社員に会社の方針を理解してもらうことを目的に導入するケースもあります。企業としてどのような人材を求めているか、どのような成果を出してほしいかを示しているからです。
社員のモチベーション向上のため
社員のモチベーション向上にも寄与します。働きぶりや成果が昇進・昇給につながると分かれば、社員のモチベーション向上が期待できるからです。社員のモチベーションが上がれば生産性や定着率の向上にもつながります。
人事評価制度の種類
人事評価制度には、以下5つの種類があります。
年功序列
成果主義
MBO
OKR
360度評価
順番に見ていきましょう。
年功序列
勤続年数の長さや年齢によって待遇に差が出る仕組みです。勤続年数が長かったり、年齢が高かったりするほど、給与・賞与の増加や役職への任命が増えます。年齢や勤続年数に伴って評価が高まるため、社員の帰属意識が強化され一体感も生まれやすいというメリットがあります。
しかし若手にとっては評価してもらいにくく、優秀な人ほど離職する傾向が高いです。モチベーション低下、チャレンジ精神の薄れも懸念されます。高齢になるほど待遇が良くなるため高齢の社員が退職せず、人件費がかさむというデメリットもあります。
成果主義
出した成果を評価する仕組みです。成果を上げれば評価が高まるため、社員のモチベーションの上昇、ひいては業績の拡大も期待できます。
一方で失敗を避けるためにチャレンジしなくなったり、個人プレーが多くなったりすることも予想されます。組織としての一体感を作り出すためにも、いかに社員たちの協力性を引き出すかが重要です。
MBO
Management by Objectives(目標による管理)の略。目標の達成度合いで評価する仕組みです。組織としての目標と個人目標を結びつけ、個々が目標を達成することで組織目標も達成できるようになっています。
OKR
Objectives and Key Results(目標と成果指標)の略称です。MBOと同様に、目標の達成度合いで評価します。100%達成ではなく60~70%達成率が理想です。
個々の目標をオープンにし、上司や人事以外の人からも達成度合いが見えるような仕組みとなっています。
360度評価
上司だけでなく、同僚や部下からも評価をしてもらう仕組みです。複数の人から評価をもらうことで、多面的に自身の良い点や欠点を知れるため、評価に対して納得感を得られやすいとされています。
バリュー評価
企業が掲げるバリュー(行動規範)の浸透度や実践度に対して、評価を行う仕組みです。企業の理念や行動指針、価値観に合った社員を育成できます。
情意評価
仕事に対する姿勢や意欲を評価するものです。これにより、愛社精神・帰属意識の高い社員が生まれやすくなります。
ただ気持ちに対する評価であるため、評価は評価者の主観に偏ってしまう点に注意が必要です。
人事評価制度を運用するメリット
人事評価制度の運用には、以下のようなメリットがあります。
生産性の向上
人材育成がしやすい
上司と部下間のコミュニケーションの活発化
上記について、順に詳しく説明します。
生産性の向上
評価基準が明確になることで、社員一人ひとりがどのような行動を取ればよいかわかり、モチベーションも向上しやすいです。
目標達成に向かって努力する社員も増え、結果的に組織全体の生産性向上につながります。
人材育成がしやすい
人事評価制度の導入後は、定期的な評価が必要です。これにより上司が部下へ目を向ける時間が増えるため、それまでは見えてこなかった個々のスキルや課題が見えるようになります。指導やフォローなどの人材育成もしやすくなります。
コミュニケーションの活発化
人事評価制度の導入後は、定期的に部下の成果や目標に対する進捗などを確認する必要があります。これにより、部下と上司の間にコミュニケーションを取る機会が増え、社内のコミュニケーションが活発になります。
人事評価制度を導入する際の注意点
業務外で時間を割く必要がある
人事評価制度の運用には多くの労力が必要です。
運用開始前には、制度を設計し社員へ説明しなければなりません。開始後は、評価や面談、目標設定などがあります。評価者だけでなく評価を受ける社員側にも業務外の負担が増えることになります。
低評価者へのフォローを忘れない
評価が低かった社員へのフォローも忘れてはいけません。
人事評価制度を導入すると、社員のなかに評価項目を満たせない人が出てきます。昇給や昇進を受けられなかった人にもよかったところはあるはずです。
評価項目は適宜見直す必要がある
企業の成長に合わせて、評価制度も変化させていきます。現場とのずれが生じている評価項目は社員のモチベーション低下につながるので、適宜見直しをすることが大切です。
評価につながらない業務を行わなくなる可能性がある
人事評価の導入後、評価につながらない業務が軽んじられる可能性があります。成果としては評価対象にならない仕事でも姿勢や意欲を評価項目に取り入れることで、取り組む価値を認識してもらえるかもしれません。
人事評価制度の作り方
人事評価制度は、以下の3ステップで作ります。
企業としての理念や方針を考える
評価の方法を決める
評価シートを作る
人事評価制度が企業の成長につながるように、理念や方針を再確認しましょう。
人事評価制度はそれぞれ特徴が異なるので、企業の成長に一番有用なものを取り入れます。評価方法が決まったら、誰が見てもわかるように具体的な言葉で評価項目を設定しましょう。評価項目が定まったら、項目をひとつにまとめた評価シートを作り社員が一目でわかるようにするとよいです。
人事評価制度の運用を成功させるポイント
人事評価制度の運用を成功させるには、以下のポイントを押さえることが大切です。
運用方法を社内で共有する
現場で働く人の意見も取り入れる
フィードバックを適切に行う
運用方法を社内で共有する
人事評価制度の評価項目は、社員にもわかるように共有しましょう。社員が目標や課題を持って積極的に取り組めるようになるからです。また評価者のために、人事評価のマニュアルを作成するのもよいでしょう。マニュアルが用意されていれば、誰が見ても同じ評価ができ、評価者による評価エラーも起こりにくくなります。
現場で働く人の意見も取り入れる
人事評価を作る際には、人事部だけではなく現場で働く人の意見も取り入れます。人事部だけで作成すると、現場に通用しないものになる可能性があるからです。
フィードバックを適切に行う
人事評価では、社員に対して具体的に根拠のあるフィードバックをすることが大切です。評価の理由や根拠もフィードバックしないと、評価制度に対する不信感が募ったり、モチベーションが低下したりするなどネガティブな影響を与えかねないので注意しましょう。
まとめ
人事評価制度は社員一人ひとりの働きぶりや仕事上の成果を査定し、昇給や昇進などに活かすものです。
人事評価制度を作る際には、企業としての目標や方針を再確認し、ゴールに近づけるような評価項目を取り入れましょう。このとき、人事部だけでなく現場で働く人の声にも耳も傾けることが大切です。適切な人事評価制度を導入して、企業の成長につなげましょう。