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「本当にいい1on1」を行うために必要なこと

更新日:2023年4月11日


多様性の時代のチームビルディング


皆さん、こんにちは。WMS研究員のこがねんです。


普段は事業会社で人材開発・組織開発の責任者をするかたわら、個人でも人材開発・組織開発のアドバイザリーをしています。


今日は人材開発のアプローチとして近年注目され続けている「1on1ミーティング(以下、1on1)」について、お伝えできればと思います。



 

【 目 次 】

 

「1on1」が流行っている


「1on1」は、上司と部下が定期的に面談を行い、上司が部下の話に耳を傾けることを通じて、目標達成や中長期的な成長を支援する取り組みです。頻度や実施時間に決まりはありませんが、週に1回・毎回30分を目安に実施することが推奨されています。


2012年頃から導入企業が増え始めた「1on1」ですが、当時、日本で実施している会社がほとんどない状態から、10年後の2022年の調査では約7割の企業で導入されているようです。(参考記事


まさに「1on1ブーム」と言ってもいいくらい普及した施策ですが、その一方で「導入したものの上手くいっていない」「いい1on1ができているマネジャーが少ない」といった課題を抱える企業も少なくない印象です。


現場のマネジャー視点でも「人事からの通達でやっているが意味があるのか」「もっと他にやるべきことがあるのではないか」と半信半疑のまま実施している人が増えていることもその一因ではないかと思います。


そのため、今度は「いい1on1」を実施するために他社の成功事例を集めたり、コーチングの研修を実施したり、1on1の健全度を測るオンラインツールの導入を検討したり、と次の一手を打つ企業・人事が増えてきている、でもなかなか上手くいかないケースが多い、そんな話をよく聴くようになってきました。


「どうも1on1がいいらしい」と人事が導入し、導入してみたものの「いい1on1」ができていないから、「いい1on1」を増やすための事例や法則やツール探しを続けている。言ってみれば皆で「いい1on1選手権」をしているような状況が生まれつつあるのかも知れません。


私はこの状況にとても危機感を抱いていて、1on1そのものはとても重要な取り組みであり、日本企業がもう一度輝くための起点の1つになり得る施策だと考えていますが、このままの状況が続くと、本当に「ただのブーム」で終わってしまいかねない現状だと感じています。



我々は「いい1on1選手権」をしているわけではない

我々は「いい1on1選手権」をしているわけではない。ではどうしたら「本当にいい1on1」を行うことができるのか。それには2つ工夫できることがあると思っています。


まず1つ目の工夫は「HOWではなくWHYを考える機会を増やす」ことです。


1on1のやり方・どうやるのか(HOW)ではなく1on1の目的・なぜやるのか(WHY)に立ち返る時間を経営・人事・現場マネジャーがいかに持つか、という視点です。


1on1の目的は、冒頭でもお伝えした通り、部下の目標達成や成長支援です。そして部下の目標達成や成長支援を行うためには、上司は1on1を通じて、部下を日々観察し、部下のことを知り、理解し、部下がいま考えていること、やりたいことやできることを把握する必要があります。


また部下の事を知るだけではなく、1on1という場を使って、組織の戦略や方針を伝えたり、経営陣の想いや上長の考えを伝えたり、それとセットで仕事を任せたり、目標を渡したり、と組織の情報を部下に伝えるのもまた、1on1を実施する目的のひとつになります。


こうした事業戦略上、業務推進上の重要情報を流通・交換し続ける場としての1on1の意義を、いかに経営・人事・現場マネジャーが立ち返るやりとりを増やすか。ここが「いい1on1選手権」を脱する大きなポイントになると思っています。


そして、2つ目の工夫として「1on1と1on1以外の施策との関連性を向上させる」ことも重要になってくると思います。


ほとんどの会社で行われている「目標管理(MBOやOKR)」や「組織サーベイ」や「キャリア支援施策」と1on1をそれぞれ独立した施策として考えるのではなく、相互に関連させながら同時に良いものにしていく取り組みです。


例えば、1on1研修の中で同時に目標管理の重要性を伝えたり、組織サーベイの結果フィードバックの際に「1on1などでも話題に出してね」と伝えたり、キャリアに悩んでいる層にメッセージングをする際に、上長との1on1でまずは話をすることをナビゲートするなど、人事やマネジャーが意識的に複数施策を常に繋げながらコミュニケーションし続けることが重要だと思います。



「本当にいい1on1」を行うために最も重要なこと

目的に立ち返ること。そして1on1以外の施策との関連性を高めること。この2つの取り組みで「いい1on1選手権」から脱することができると思いますが、「本当にいい1on1」を行うために最も重要なことがもう一つあります。


それは「1on1スキルではなくマネジメントスキル全般を高める」ことです。


いま起こっていることの一番の問題は「1on1スキルを上げること」に意識がいってしまっていることで、より重要な「マネジメントスキルを上げること」に意識がいっていないことだと考えています。


誤解を恐れずに言えば「1on1スキル」が低くても「マネジメントスキル」が高ければいいわけですし、「いい1on1」ができなくても「いいマネジメント」ができていれば何の問題もないわけです。


私自身も1on1について人に伝える身でありながら、正直「1on1スキルが高いか」と問われれば、私より上手に1on1をする人は沢山いると思います。でも「偉そうに言いながら大した1on1できなくてごめんね」と部下に言いながら、私なりにマネジメント全般の質を高める事には一定成功していると思います。


上げるべきは「1on1スキル」ではなく「マネジメントスキル」であり、「方針提示」「組織設計」「業務支援」「適切評価」「自己管理」といったマネージャーに原則として求められる基本動作が質高く行われるように働きかけていくこと。


こうしたスタンスでのぞむことで、1on1が「ただのブーム」で終わってしまったり、「いい1on1選手権」の罠にもはまらずに、少しずつ「本当にいい1on1」を増やしていくことに繋がるのではないかと思っています。


いかがでしたでしょうか。皆さんにとってヒントになる情報になっていれば嬉しいです。また、お読みいただいてお気付きの点があれば是非弊社まで、ご連絡いただければ幸いです。


それでは、また。



この記事を書いた人 こがねん SBIビジネス・イノベーター株式会社 「わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)」

研究員


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