今回は、組織力をあげるコミュニケーション「対話」について考えます。
【 目 次 】
他者を理解するのは難しい
日本も組織の多様化が進みつつあります。
性別、年齢、国籍、人種、民族、障がいの有無など、様々な人で組織が構成されるようになってきました。
お互いの多様性を尊重し、認めあい共に活躍や成長することができれば、イノベーションと価値創造を生むことでしょう。
とはいえ、なかなかイノベーションや価値創造に繋がらない現実に、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
人間関係が互いに働きかけ影響を及ぼす関係にならない理由の一つとして、人には個性があり、その個性の源泉といえる自分特有の基準があります。
この基準は自分の感情や思考に強い影響を与えますが、私たちは自分と異なる感じ方や考え方、ものの見方や、捉え方と遭遇すると時に不安定になります。
そうすると心理的に身構えてしまい、相手の話を聞き流す、または、すぐに意見や反論をしてしまいやすくなるのです。
自分にとって異質な他者とのコミュニケーションは難しいのです。
他者を理解するための「対話」の価値
では、人間関係を相互作用させるためにはどのようにすればよいでしょうか。
必要なことは、お互いの自分特有の基準を積極的に共有する仕組みを持つことです。
この仕組みの骨格として対話は大きな機能を果たします。
たとえば、最近は組織開発の仕組みとして、対話をベースとするコーチングやチームコーチングを取り入れる組織も多くなっています。
その理由として、対話がうまく機能すると、自分とは異なる基準を持つ相手との相互理解を促進します。
効果的な対話を用いると、人間関係を相互作用へと促して新たなアイデアや知恵、方法が生み出されやすくなるのです。
対話によって得られる相互理解において大切なのは、その人らしさそのものを理解することですが、組織でよく起こることがあります。
それは、人はそれぞれ強みと弱みを持ちますが、強みの活用に焦点をあてて弱みを軽減しようとすることです。
ただ、この強みと弱みは環境や人間関係によって簡単に逆転しやすいものです。重要なのは、強みも弱みも含めたその人らしさそのものを、受け入れ理解しあうことなのです。
効果的な「対話」とは?
相互理解に効果的な対話ですが、組織で行われる対話を観察すると、うまく対話が機能していない状態があります。
多くみられるのは、縄張り的対話、カオス的対話、消極的な対話です。
①縄張り的対話(セクショナリズム)
自分や自部署を守るために、自分や自分たちの利益を優先しようとすることで見られる対話です。縄張り意識が高まり、他に対して排他的で非協力的な対話が起きます。
②カオス的対話(コンフュージョン)
お互いの話し合いがかみあわず、混沌としたやりとりが起こる対話です。
組織であればミッション・ビジョンが不明確だったり、会議でゴールが不明確で話し合いの平行線が続きます。
③消極的な対話(ネガティビティ)
後ろ向きな話し合いや、消極的なやりとりが見られる対話です。
未来に対する不確実性への不安が高まることでうまれます。
このような、うまく対話が機能していない状態では、相互理解は進みません。
逆に、対話によるコミュニケーションが機能すると、協働的な対話、秩序的な対話、肯定的な対話ができ、相互理解が進みます。
①協働的な対話
自分たちや自分たちの部署の役割を意識し、組織全体の利益や価値の向上に意識を向けて協力的に考えていく対話です。
②秩序的な対話
お互いの意見や意図を相手に説明しながら、不明確なことをあきらかにしながら共通理解を深めていく対話です。
③肯定的な対話
うまくいったことを活かし、うまくいかなかったことは改善しながら、これからチームや組織をどうしていくかを前向きに話し合う対話です。
まとめ
組織力をあげるコミュニケーション「対話」について考えました。
他者を理解するのは難しいという見出しで始まりましたが、他者を理解するたった一つの方法は「対話」であるともいえます。
▼この記事を書いた人 佐藤 純子(さとう じゅんこ) SBIビジネス・イノベーター株式会社 「わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)」 センター長 |
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