メンターとは?意味・制度のメリットをわかりやすく解説|導入の流れと成功のポイント
- なつき 高橋
- 11 分前
- 読了時間: 12分

企業の人材育成において「メンター制度」は、若手社員の不安を軽減し、働きやすい環境を整える仕組みとして注目されています。
メンターは業務指導を行う上司とは異なり、キャリアや人間関係など、幅広い悩みに寄り添い、メンティーの成長を支える存在です。
本コラムでは、メンターの意味や役割、メンター制度の目的、導入の流れ、メリットや課題をわかりやすく解説します。
【 目 次 】
メンターとは?意味と役割をわかりやすく解説
メンター・メンティーの基本的な意味と関係性
メンターとはどのような人?役割と責任
メンターとチューターの違い
メンター制度とは?目的と仕組みを理解する
メンター制度の定義と導入目的
メンター制度とOJT・コーチング・エルダー制度との違い
メンター制度が注目される背景(離職防止・育成・心理的安全性)
メンター制度を導入する流れと運用のステップ
導入目的・対象層を明確化する
メンター・メンティーのマッチング方法
事前研修・運用ルールの設定
振り返り・フォローアップ体制の整備
メンター制度のメリットと課題
メンティーにとってのメリット(不安軽減・キャリア形成)
メンターにとってのメリット(リーダーシップ向上・信頼形成
企業にとってのメリット(離職防止・人材育成)
よくある課題と失敗例(形骸化・負担感・「うざい」と思われる理由)
まとめ|メンター制度を活用した研修体系
メンターとは?意味と役割をわかりやすく解説

企業や組織で「メンター」という言葉を耳にする機会が増えています。
メンターとは、仕事やキャリア、時には人生に関する悩みを相談できる“身近な助言者”のことです。
最初に、メンターとメンティーの関係性やメンターに求められる役割、そして混同されやすい「チューター」との違いを整理していきます。
メンター・メンティーの基本的な意味と関係性
メンターとは、経験や知識を活かして後輩や若手社員をサポートする人です。
一方、支援を受ける側を「メンティー」と呼びます。
メンターとメンティーは、上司・部下のような上下関係ではなく、「信頼」と「対話」を軸にした対等な関係です。
メンターは業務の具体的な指示を出すのではなく、メンティーの悩みや迷いを聞き、成長の方向性を一緒に考えます。
メンティーは、安心して相談できる存在を得ることで、仕事への自信や自己理解を深めていきます。 相互の信頼関係が築かれることで、職場全体にも安心感や一体感が生まれます。
参考:日本メンター協会|メンターとは?メンター像には、目的別に2つの類型がある
メンターとはどのような人?役割と責任
メンターの役割は、メンティーの「成長のきっかけを引き出すこと」です。
そのためには、相手の話に耳を傾け、気持ちを受け止める「傾聴力」や「共感力」が欠かせません。
メンターは指導者ではなく支援者であり、正解を押しつけるのではなく、本人の中にある答えを引き出す立場といえます。
メンターとチューターの違い
「メンター」と「チューター」はどちらも支援者を指しますが、その目的とかかわり方に違いがあります。
チューターは、主に業務や学習内容を教える立場で、知識やスキルの習得を目的としています。
一方、メンターは、キャリアや人間関係、仕事への向き合い方など、より幅広く心の支えとなる存在です。
つまり、チューターが「仕事のやり方」を教えるのに対し、メンターは「仕事との向き合い方」を一緒に考える役割です。
両者はどちらも大切ですが、メンターの存在は、メンティーが長く働くうえでの安心感や自己成長の促進につながります。
メンター制度は、スキル教育を超えた「人の成長支援」の仕組みといえます。
メンター制度とは?目的と仕組みを理解する

近年、多くの企業が人材育成の一環としてメンター制度を導入しています。
メンター制度は、キャリアや働き方に関する相談に応じ、メンティーの成長を長期的に支援することを目的としています。
また、職場での不安を軽減し、早期離職を防ぐ効果も期待されており、心理的安全性を高める取り組みとして重要視されています。
ここでは、メンター制度の定義、他の育成制度との違い、そして制度が注目される背景についてわかりやすく解説します。
メンター制度の定義と導入目的
メンター制度とは、経験豊富な先輩社員(メンター)が若手社員や新人(メンティー)をサポートする仕組みです。
制度を導入する目的は、メンティーの早期戦力化だけでなく、職場に慣れる過程で生じる不安を減らし、安心して働ける状態をつくることにあります。
また、メンター自身にとっても、後輩支援を通じて視野が広がり、リーダーシップやコミュニケーション能力の向上につながるというメリットがあります。
企業にとっては、人材育成の質を高めるだけでなく、離職防止や組織の活性化に役立つ重要な制度といえるでしょう。
メンター制度とOJT・コーチング・エルダー制度との違い
メンター制度と似た育成制度はいくつかありますが、それぞれ目的やかかわり方が異なります。
・OJT
実務を通じてスキルを教えることを目的とし、上司や教育担当者が直接指導を行う仕組みです。業務習得が目的であり、メンタル面の支援は主な役割ではありません。
・コーチング
対話を通じて本人の目標達成を支援する手法であり、質問によって気づきを促す点が特徴です。
・エルダー制度
先輩社員が実務面や会社生活の基本を教える制度で、業務に関するフォローが中心となります。
一方、メンター制度は「仕事のやり方」よりも「仕事との向き合い方」を支える仕組みであり、キャリアや人間関係など、より広いテーマに寄り添う点が大きな違いです。
OJTやビジネスコーチングについては、以下の記事もぜひご覧ください。
▼関連記事
・OJT研修とは?正しいやり方、成功させるための3つのポイントを解説
・ビジネスコーチングの重要性と基本スキル
メンター制度が注目される背景(離職防止・育成・心理的安全性)
メンター制度が注目される背景のひとつに、若手社員の早期離職の増加があります。
仕事への不安や職場に馴染めない悩みは、業務指導だけでは解決できない場合があります。
メンター制度は、メンタル面の支えを得ることで安心して働ける環境をつくり、離職の抑制につながります。
また、多様な働き方が広がるなかで、キャリアの悩みを気軽に相談できる相手の存在は、メンティーの成長を大きく後押しします。
さらに、メンター制度は、心理的安全性を高める取り組みとしても有効です。
組織における心理的安全性とは、誰に対しても安心して発言や行動ができる状態を指します。
特に、新入社員や若手社員にとっては、あらかじめ決められたメンターがいることで、いつでも「困ったときに相談できる」という安心感を得られる点が大きな利点です。
職場における心理的安全性の重要性については、以下のコラムも参考にしてください。
▼関連記事
心理的安全性がない職場が失っている重要なメリット
メンター制度を導入する流れと運用のステップ

メンター制度を効果的に運用するためには、あらかじめ全体の流れを整理し、目的に沿った仕組みづくりを行うことが重要です。
制度は導入して終わりではなく、メンター・メンティー双方が安心して参加できる環境づくりが欠かせません。
そのためには、目的の明確化、適切なマッチング、研修やルールづくり、そして継続的な振り返りが必要です。
ここでは、導入時に押さえるべき基本ステップをわかりやすく解説します。
導入目的・対象層を明確化する
メンター制度の導入で最初にすべきことは、「なぜ制度を導入するのか」「どの層を対象にするのか」を明確にすることです。
若手社員の離職防止なのか、キャリア支援なのか、あるいは組織の心理的安全性向上なのか、目的によって制度の設計は大きく変わります。
目的が不明確だと、活動が形式的になり、メンター・メンティー双方に負担だけが残る恐れがあります。
また、対象層を「入社1〜3年目」「部署異動者」など具体的に決めることも必要です。
組織全体に制度の意義を丁寧に説明し、目的を共有することが、制度成功の第一歩になります。
メンター・メンティーのマッチング方法
制度の成否を左右する重要な要素が「マッチング」です。
メンターとメンティーの相性が良いほど、対話が深まり、制度の効果も高まります。
マッチング方法には、企業側が決める「割り当て方式」、メンティーが希望を出す「指名方式」、双方の希望を踏まえる「相互マッチング方式」などがあります。
また、相性を考慮するために、簡単なアンケートや面談を取り入れる企業も増えています。
重要なのは、人事や管理部門が一方的に決定するのではなく、双方の意向を可能な限り反映できる仕組みを整備することです。
適切なマッチングは、相談のしやすさや信頼関係の構築に直結します。
事前研修・運用ルールの設定
制度導入の前には、メンター・メンティー双方に対して「事前研修」を行うことが必要です。
研修では、メンターの役割や注意点、メンティーの姿勢、相談方法、守秘義務、報告のルールなどを共有します。
また、活動頻度(例:月1回の面談)や面談時間、相談内容、記録方法などの運用ルールを事前に定めることで、制度の形骸化を防げます。
ルールが曖昧なまま始めると、メンターの負担が増えたり、メンティーが相談しづらくなったりするため、導入前の準備が重要です。
研修とルールづくりを丁寧に行うことで、制度全体の質を大きく引き上げられます。
振り返り・フォローアップ体制の整備
メンター制度は、運用と並行して継続的に改善していく仕組みです。
そのためには、メンター・メンティー双方の声を定期的に聞き取り、必要に応じて制度を見直す「振り返り」と「フォローアップ」が欠かせません。
面談の状況や困っている点を共有する場をつくることで、メンターが孤立するのを防ぎ、制度全体の質を高められます。
また、メンター同士の情報交換の場を設けることで、成功事例や課題を共有でき、より効果的な支援が可能となります。
継続的なフォローアップ体制が整っていると、制度の信頼性が高まり、メンター・メンティー双方が安心して活動できます。
メンター制度のメリットと課題

メンター制度には、メンティー・メンター・企業の三者にとって多くのメリットがあります。
一方で、制度がうまく運用されないと「形だけの制度」になってしまうリスクもあります。
メリットと課題の両面を把握することで、より実効性の高い制度設計につながります。
ここでは、それぞれの立場におけるメリットと、導入時に起きやすい失敗例をわかりやすく整理して解説します。
メンティーにとってのメリット(不安軽減・キャリア形成)
メンティーにとっては以下のようなメリットがあります。
仕事の不安が軽減される
職場での孤立を防ぎ心理的安全性を得られる
ロールモデルやキャリア形成の参考になる
最大のメリットは、仕事上の不安を相談できる「安心できる相手」を得られることです。
特に入社直後や部署異動の時期は、業務以外の悩みも多く、相談できずに孤立するケースも少なくありません。
メンターの存在によって、気持ちの整理やストレスの軽減につながり、働き続ける自信を持てるようになります。
また、メンターとの対話を通じて「自分がどのようなキャリアを目指したいか」を考えられるため、長期的な成長にもつながります。
成功体験や失敗談を聞くことで視野が広がり、ロールモデルができるのも大きなメリットです。
精神面の支えを受けながら、自分らしいキャリア形成が進められる点も、メンティーにとって大きな価値といえるでしょう。
メンターにとってのメリット(リーダーシップ向上・信頼形成)
メンター制度はメンター側にも多くのメリットがあります。
リーダーシップスキルが身につく
業務知識が深まる
後輩の相談に向き合うなかで「傾聴力」や「状況を整理して助言する力」が養われ、リーダーシップが自然と高まっていきます。
教える経験を通じて自分の知識や考え方を振り返る機会にもなるため、仕事への理解が深まり、自身の成長にもつながるでしょう。
メンタリングの経験は、将来的に管理職をめざす人にとっても重要です。
企業にとってのメリット(離職防止・人材育成)
企業にとって、メンター制度は人材育成と組織運営の両面で大きな効果をもたらします。
まず、若手社員の不安を軽減し、働く環境への適応をサポートすることで、早期離職を防止する効果が期待できます。
また、メンティーが学びを深めるだけでなく、メンター自身の成長も促されるため、組織全体の育成力が高まります。
メンター・メンティーの交流は社内コミュニケーションを活性化し、部署を超えたつながりを生む点も魅力です。
心理的安全性の高い職場づくりにも寄与し、結果として企業文化の安定や組織力強化につながります。
参考:「メンタリングが職場に及ぼす影響」神戸大学大学院経営学研究科 竹内雄司
よくある課題と失敗例(形骸化・負担感・「うざい」と思われる理由)
メンター制度には多くのメリットがある一方、運用方法を誤るとトラブルや不満につながる場合があります。
制度の形骸化
メンターへの負担が大きくなる
メンターとメンティーの信頼関係が築かれない
よくある課題は「制度が形だけになってしまう」ことです。
目的が共有されていないまま始めると、面談が形式的になり、メンティーも相談しづらくなります。
メンターは自身の業務と並行して対応する必要があるため、負担を感じるケースもあります。適切なフォロー体制がないと、メンターが孤立し、活動がうまく進みません。
さらに、メンターが一方的にアドバイスを押しつけると、メンティーに「うざい」「意味がない」などと受け取られ、信頼関係が損なわれる可能性もあります。
人事側がマッチングする際には、メンターとメンティーの相性や世代間ギャップなどにも配慮する必要があるでしょう。
制度を継続的に改善し、関係者全員が安心して参加できる環境を整えることが、失敗を防ぐために欠かせません。
まとめ|メンター制度を活用した研修体系
メンター制度は、メンティーの不安軽減やキャリア形成を支えるだけでなく、メンター自身の成長や企業全体の育成力向上にもつながる重要な仕組みです。
効果的に運用するには、導入目的の明確化、適切なマッチング、研修やルールの整備、継続的な振り返りが欠かせません。
また、制度を形骸化させず、対話しやすい環境を整えることで、社員一人ひとりが安心して働ける職場づくりに貢献します。
メンター制度を企業の研修体系の中に位置づければ、より戦略的な人材育成が可能になるでしょう。
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