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日本の企業教育の今とこれから VUCA時代の組織・人材に必要なこととは


日本の企業教育の今とこれから

総研コラムでは、わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)(WMSC)の研究員らが「企業で働く個人のユニークネスと組織のオリジナリティを最大限に発揮する」ためのヒントとなるような知見や情報を提供します。

近年、グローバル化やテクノロジーの進化により、企業を取り巻く環境が大きく変化しています。このような状況下で、従来の日本的な企業教育のあり方に変革が求められています。


本コラムでは、日本の企業教育の現状と今後について解説します。


(執筆者:WMSCセンター長・佐藤 純子)


 

【 目 次 】

 

日本の企業教育と世界の傾向


東京タワーとビル

これまでの日本の企業教育は、長期的な視点で従業員を育成し企業文化や組織の一体感を重視する傾向があります。その背景には、長期雇用と新卒一括採用制度といった歴史的な雇用慣行や、上司や先輩からの直接指導を通じてスキルを習得するOJT文化が深く関わっています。


日本の企業教育の特徴として挙げた傾向は、メリットとして企業のビジョンやミッションが浸透しやすく、従業員の忠誠心が高まります。また、上司や先輩からの直接指導は、実践的なスキルが習得でき、現場での即戦力となる能力が育成されます。


デメリットは、長期雇用や新卒一括採用に依存することで、外部からの新しい視点やスキルが入りにくくなり、企業の柔軟性が低下する可能性があることです。市場の変化や技術革新に対して、適応が遅れるリスクがあります。


一方、世界の多くの国では、流動的な労働市場や個人のキャリア志向、IT技術の進展に起因して、職務に基づいた専門的な教育や自己啓発の機会を重視し、テクノロジーを活用した学習が進んでいます。

特に欧米諸国は、移民を受け入れてきた多民族国家であることから、異なる文化的背景を持つ労働者が共存しており、それぞれが異なるスキルセットや教育ニーズを持っています。


これにより、企業は多様な教育プログラムを提供する必要があります。また、多様な文化的背景があることで、異なる視点やアイデアが生まれやすく、これを活かすための教育が重要となります。


これらの企業教育の在り方の違いは、それぞれの国や地域の文化的、経済的背景に根ざしており、教育の形態に大きな影響を与えています。



ビジネス環境の現状と予測


下のグラフは厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)から抜粋しました。

日本企業がおかれるビジネス環境の現状と予測としても、人口減少に伴い急速に外国人雇用が進み、異なる文化的背景を持つ労働者が共存する社会への移行していくことが予測できます。


在留資格別外国人労働者数の推移

出典:厚生労働省「外国人雇用状況


さらに、外国人雇用による影響だけでなく、世代・年齢によって考え方や価値観、文化や常識などによって生じる認識やコミュニケーションのズレ・隔たりは大きくなります。

人は、生まれ育った時代の社会背景や流行などから生じる価値観や行動様式が反映されやすいものです。パンデミックの流行や世界情勢が混迷する2019年以降は、特に若者の価値観や信念が大きく変化しています。


今後の日本はより多文化共生が進み、さまざまな民族や価値観の違う人々が共存する社会へと変化していくことが予想されます。それにより生まれるギャップは、日本の企業にとってこれまで以上の多様性の受容や異文化理解の重要性を増す要因となり、新たな教育アプローチの採用が求められています。



テクノロジーの進歩と創造性


オフィスで働く人々

テクノロジーの進歩の基盤は人の創造性です。創造的な思考と新しいアイデアが革新的な技術の発展を促します。多様な視点や異なる背景を持つ人々が集まり、自由に意見を交換することで、斬新なソリューションが生まれます。


企業はテクノロジーだけでなく、従業員の創造性を育むための環境や教育にも投資する必要があります。創造性がなければ、真のイノベーションは達成できません。多様性と不確実性に対峙するために、従業員の創造性を育むための教育に力を入れることが重要です。


創造性を高める効果的なアプローチを挙げます。


1. クリエイティブワークショップ

定期的にクリエイティブワークショップを開催し、従業員が新しいアイデアを自由に発表し、共有できる場を提供します。これにより、異なる視点や新しいアイデアが生まれることが期待されます。


2. プロジェクトベースの学習

従業員が自らプロジェクトを計画し、実行することで、創造的な問題解決能力を養います。このような学習方法は、業務スキルを身につけることにも役立ちます。


3. 異文化交流とグローバルな視点

国際的なチームや異なる文化背景を持つ同僚と協力する機会を増やすことで、多様な視点やアイデアに触れることができます。異文化交流を通じて、新しい発想やアプローチが生まれる可能性が高まります。


4. 芸術や文化への投資

芸術や文化に触れる機会を提供することで、従業員の創造性を刺激します。例えば、アートギャラリーへの訪問や音楽イベントへの参加、クリエイティブなワークショップなどを企業内で実施することが考えられます。


5. オープンなコミュニケーションとフィードバックの文化

オープンなコミュニケーションとフィードバックの文化を促進することで、従業員が自由に意見を述べ、改善提案を行うことができる環境をつくります。これにより、従業員の創造性が最大限に発揮されることが期待されます。


これらのアプローチを通じて、企業は従業員の創造性を高め、競争力を維持しつつ、イノベーションを促進することができます。



人材育成、組織開発に対する投資のゆくえ


財務資料と虫眼鏡


これまで通りではない変化を求められる人材育成、組織開発に対する投資は今後どうなってゆくのでしょうか。

ここに産労総合研究所「教育研修費用総額の今後の方向性」 を抜粋します。

今後(1~3年)の教育研修費総額の見込みについてたずねたところ、「かなり増加する見込み」が9.7%、「やや増加する見込み」が53.1%で、合わせて62.8%と6割強となった。 増加見込みの企業はだいたい5割前後で推移しており、2020年度に3割弱と大きく落ち込んだが、その後回復、2023年度調査ではここ10年ほどで最も高い増加傾向となった。 「増加」見込みの理由としては、「コロナ禍が落ち着いたことで研修全体の見直しを検討しているため」「コロナ禍で中断していた研修を再開するため」「経営方針として人材育成に力をいれるとしているため」「キャリア教育やデジタル教育、リスキリング関連の教育を新設・強化するため」といった声があがっていた。
教育研修費用総額の今後(1~3年)の方向性

出典:産労総合研究所「教育研修費用総額の今後の方向性


産労総合研究所のレポートから、日本の企業も教育に対する投資を重要視する傾向があることがわかります。

労働力不足に対応しながら、技術革新やデジタル化への迅速な対応を求められる現代、グローバル競争に打ち勝つために企業が教育へ投資をすることは優先順位が高い項目であることは当然の結果です。



WMSCの目指すもの


わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)(WMSC)は、企業教育の基盤として創造性の源である「対話する力」を重視した企業教育支援の研究開発を進めています。これは、個人や組織全体のユニークさを引き出し、最終的には企業の競争力を高めるための重要な手段です。

「対話する力」の質を高めることで、個人と組織が持つ潜在能力を引き出し、企業全体の競争力を向上させることを目指しています。

私たちは「対話する力」こそが、組織の長期的な成長と成功に繋がると信じています。


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▼この記事を書いた人

佐藤 純子(さとう じゅんこ)

「わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)」センター長


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