最近よく「組織活性化」という言葉を耳にしますが、組織活性化とは何でしょうか。
組織活性化とは、組織内のコミュニケーションが円滑にいき、メンバーが目的や価値観を共有して自発的に動いている状態のことです。
組織活性化について説明されても、具体的な取り組み方法がわからないという人も多いでしょう。
この記事では組織活性化の5原則について、また、組織活性化に活かせるアイデアやフレームワークについて説明します。
【 目 次 】
組織活性化の目標とメリット
組織活性化の5原則
社内のコミュニケーションを活性化するアイデア
組織活性化に活かせるフレームワーク
組織活性化とは?
組織活性化とは、英語にすると「Organizational Activation」、組織がうまく機能している状態、という意味になります。
筑波大学の名誉教授である河合忠彦氏と東京大学の名誉教授である高橋伸夫氏の共著『組織活性化の展望』によると、組織活性化は以下のとおり定義されています。
「組織のメンバーが、①相互に意思を伝達し合いながら、②組織と共有している目的・価値を③能動的に実現していこうとする状態」 |
つまり、コミュニケーションや情報の伝達がスムーズに行われ、組織が共通の目標やビジョンを持って自発的に動くようにするのが組織活性化です。
組織活性化に似た考え方として、「組織開発」という言葉があります。組織開発は組織の人間関係に焦点を当てて働きかけを行い、組織全体のパフォーマンスを向上させていく考え方です。
組織開発も組織活性化も、どちらも組織をより良い状態にしていく、という意味で共通しているといえるでしょう。
組織開発は、英語で「Organization Development」といい、1950~60年代にアメリカの社会心理学や行動科学をもとに生まれた考え方です。
一方、組織活性化は、前述したように河合忠彦氏や高橋伸夫氏など、日本の経営学や組織学の研究者たちから提唱された理論である、という違いがあります。
組織活性化の目標とメリット
組織活性化の目標は、以下の3つの視点で設定することが大切です。
コミュニケーションの活性化
目的や価値観の共有
メンバーのモチベーションの向上
それぞれの目標に応じて、組織・メンバー・ビジネスパフォーマンスの各分野で指標を設け、各指標で定性的・定量的な評価を行うようにしましょう。
組織活性化を行うことで、どのようなメリットがあるでしょうか。
組織活性化のメリットをまとめると以下のようになります。
メンバーのエンゲージメント向上
組織の業務パフォーマンスの向上
人材育成の活性化
組織活性化によって、メンバーはやりがいや他のメンバーとのつながりを感じられるようになり、エンゲージメントが向上します。
活性化された組織では、メンバーの離職率も下がり、定着率が上がるというメリットがあります。
もちろん、組織のコミュニケーションやメンバーのモチベーションがアップすることにより、業務パフォーマンスの向上も期待できます。
また、組織活性化により、組織のメンバーや組織自体が自発的に動くようになれば、組織の風土や文化が醸成されます。
良い風土や文化がある組織では、新しいメンバーが入ったり、メンバーが交代したりしても、必要な教育や人材育成がスムーズに自然と行われるようになる、という効果があります。
組織活性化の5原則
組織活性化の5原則は、SDモデルを活用した5段階で表されることがあります。
SDモデルとは、「System Dynamics」の略語で、元々はコンピュータシミュレーションを利用して組織の時間と共に変わる性質を研究するために考えられた手法です。
組織活性化にSDモデルをあてはめ、以下の5つの手順で進めていくのが望ましいとされています。
Search(自己探求)
Satisfaction(他者の受け入れ)
Spin(組織全体への展開)
Design(計画の策定)
Development(ふり返りと発展)
1. Search (自己探求)
組織活性化の始まりは、Search(自己探求)からです。自分自身を深く理解し、自分の強みやアピールポイント、価値観、大事にしていることなどを改めて分析し、明確にしましょう。
自己を理解しはっきりと伝えられることが、他者との理解を深めるうえでも重要です。
自己理解を進めるためには、セルフコーチングなどの手法を活用してもよいでしょう。
2. Satisfaction (他者の受け入れ)
次に、Satisfaction(他者の受け入れ)として、メンバー同士の相互理解を深めていきます。
ここでは、業務に関係する打ち合わせではなく、あえてメンバー同士がわかり合うことを目的とした対話を重視することが大切です。
価値観や意見の違いを評価するのではなく、受け入れて理解し合うようにしましょう。
3. Spin (組織全体への展開)
Spin(組織全体への展開)では、相互理解を組織全体のビジョンや目的の共有に展開していきます。
ただ受け入れられているという状態から、組織のビジョンを共有し達成するよう意識するよう展開し、メンバーの自発的・主体的な行動を促します。
4. Design (計画の策定)
ビジョンの共有ができたら、そのための具体的な計画をDesign(策定)します。
ビジョンの実現に向けて、現状とのギャップや課題を洗い出し、必要なアクションプランを立てていきます。
組織を活性化するためには、計画の策定にメンバー全員がかかわるようにすることが大切です。
5. Development (ふり返りと発展)
Development(ふり返りと発展)では、計画を策定し実行したあとで、成果をふり返り改善すべき点を修正して次のアクションにつなげていきます。
成果をふり返ることは、メンバーの意識を共有するうえでも重要です。
やりっぱなしにせず、必ず結果についてメンバー全員で共有し、メンバー一人ひとりが自分の役割や責任について考えるきっかけをつくりましょう。
組織活性化の取り組み事例やアイデアを紹介
組織活性化に取り組みたいと思っていても、実際にどうやって始めたら良いかわからない、という人もいるでしょう。
組織活性化に決まった手順ややり方があるわけではありませんが、組織論のアイデアやフレームワークを活用することはできます。
ここでは、コミュニケーションと組織自体の活性化の2つの観点に分けて、アイデアの事例や活用できるフレームワークを紹介します。
社内のコミュニケーションを活性化するアイデア
組織活性化でまず重要なのは、組織内のコミュニケーションを活性化することです。
自然なコミュニケーションがとれていない組織では、メンバーの本音や意見が反映されないため、目的の共有意識は薄く、モチベーションも上がりません。
社内のコミュニケーションを活性化する方法として、企業で実際に取り組みされている事例やアイデアを紹介しますので参考にしてください。
マルチ担当制
マルチ担当制とは、複数担当制とも呼ばれ、一つの業務を複数の人が担当する体制のことです。
似た意味の言葉としてダブルアサインメントがあり、これは一つの業務を一人ではなくペアで担当させる制度のことを言います。
マルチ担当制やダブルアサイメントを取り入れると、業務の属人化が避けられ、業務ノウハウが組織で共有されるというメリットがあります。
さらに、マルチ担当制を行うことによって、メンバー同士は自然とコミュニケーションを取る必要が生じ、結果として相互理解が深まるというメリットも期待できます。
ITツールの導入やサーベイの実施
社内のコミュニケーションをスムーズに行うために、チャットや社内SNSなど、ITツールを導入するという方法もあります。
最近では、無料・有料問わず、さまざまなチャットや社内SNSツールが利用できます。
これらのITツールを上手に活用することで、社内での情報共有だけでなく、メンバー同士で相互理解を深めるきっかけをつくり、ナレッジを高める効果が期待できるでしょう。
組織全体でツールを使えるようになれば、業務プロセスも効率化しますし、社内連携の密度も高くなります。
ITツールの使い方を共有することで、普段の業務とは違うつながりができるチャンスも増えるかもしれません。
また、ITツールを導入すると、アンケート集計や意見の集約がしやすくなります。
ITツールを導入した際には、メンバーへのアンケートや利用状況の分析などでサーベイを実施し、組織内のコミュニケーション活性化に役立てるとよいでしょう。
スピークアップ制度
スピークアップ制度とは、セクハラやパワハラなどコンプライアンス違反に関する内部通報制度のことです。
コミュニケーションを活性化するためには、組織内で心理的安全性が担保されている必要があります。
いくら対話の機会を設けたり、社内SNSを導入したりしても、言いたいことが言えない環境でコミュニケーションが円滑になるわけはありません。
スピークアップ制度により、会社の方針や上司への不満・疑問などをすくい上げるようにすれば、組織への信頼度が高まり、結果としてコミュニケーションがスムーズに行える効果が期待できます。
組織活性化に活かせるフレームワーク
フレームワークとは、目標達成や業務遂行のための「枠組み」や「手法」のことを言います。
ビジネス上でよく用いられるフレームワークを、組織活性化に活かすことも可能です。
ここでは、
マッキンゼーの7S
1on1ミーティング
カッツ理論
ACHIEVEミーティング
の4つのフレームワークを紹介します。
組織開発や組織活性化に活かせるフレームワークについては、以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。
マッキンゼーの7S
アメリカのコンサルティング会社「マッキンゼー・アンド・カンパニー」が開発した組織マネジメントの考え方です。
マッキンゼーの7Sとは以下の7つの要素を言います。
Structure(構造)
System(システム)
Strategy(戦略)
Skill(スキル)
Staff(スタッフ)
Style(スタイル)
Shared value(価値共有)
「McKinsey 7S framework」「マッキンゼーの7s」などと呼ばれ、日本でも経営学やマネジメント手法として各所で取り入れられています。
マッキンゼーでは、7Sをダイアグラムの形で表現し、最後の「Shared value(価値共有)」を7つのSの中心に位置づけています。
7つのSの各々の資源とお互いの関係性に注目しながら、組織の現状と組織の戦略とのギャップを考えていきます。
1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に対話することを指します。
上司が部下を評価するミーティングとは異なり、1on1ミーティングでは人材育成やモチベーション向上を目的とした対話を重視するのが特徴です。
1on1ミーティングは、週1回から月1回程度のペースで定期的に行います。その際、部下は業務の報告や相談をするのではなく、上司は基本的に聞き役に徹して、部下自身の自発的な気づきや成長を促すことがポイントです。
1on1ミーティングは、部下の成長を促すことに加え、以下のようなメリットがあると言われています。
上司と部下の信頼関係を構築できる
離職を防止できる
組織内の心理的安心感が高まる
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ACHIEVEミーティング
ACHIEVEミーティングとは、メンバー個人の目標と組織全体の目標をすり合わせるためのミーティングです。
1on1ミーティングが、上司と部下1対1で行うのに対し、ACHIEVEミーティングはチーム全体で定期的に行います。
単なる報告や進捗管理のミーティングではなく、あくまでもメンバー全員の目的を組織として共有するのが目的のミーティングです。
時間はかかりますが、メンバー一人ひとりが、組織の中で自分の役割や責任を再認識でき、モチベーションアップできます。
さらに、メンバー同士で情報共有もでき、組織内のコミュニケーションアップにもつながります。
カッツ理論
カッツ理論(カッツモデル)とは、組織の中で求められる管理能力を、テクニカルスキル・ヒューマンスキル・コンセプチュアルスキルの3つに分けて捉える考え方です。
アメリカの経済学者ロバート・L・カッツによって提唱され、現在では世界中で人材育成や組織開発の指針として活用されています。
カッツ理論では、マネジメントの各層ごとに求められるビジネススキルを以下の3段階に分けています。
テクニカルスキル(技術能力)
ヒューマンスキル(人間関係能力)
コンセプチュアルスキル(概念能力)
テクニカルスキル
現場で実際に遂行する際に必要となる実践的な知識やスキルのことです。
技術者であれば専門的な技術知識、営業職であれば商品知識やプレゼンテーション能力など、特定の作業を行うために必要な知識やスキルを指します。
現場に近い具体的な作業を行う人ほどこのスキルが重要になります。
ヒューマンスキル
対人関係を構築する能力のことです。他者とのコミュニケーションを円滑にし、協働や組織の信頼関係を高めることに寄与します。
直接人をマネジメントするリーダーや中間管理職などには特にこの能力が必要とされるでしょう。
コンセプチュアルスキル
抽象的な思考や多面的視野で物事を捉える能力です。本質を見抜いたり、俯瞰的な視野で物事の共通点や解決策を見出したりします。
組織全体のことをマネジメントする、長期的な戦略を立てるなど、トップマネジメントに特に必要とされる能力といえます。
カッツ理論のフレームワークを取り入れると、組織のメンバーの階層に合わせて必要な能力を明確にできます。目標と現状とのギャップや課題認識に有効なフレームワークです。
【まとめ】組織とコミュニケーションを活性化するためにフレームワークや事例を活用する
組織活性化とは何か、活用できるアイデアやフレームワークについて解説しました。
組織活性化のためには、組織内のコミュニケーション円滑化や目標・価値観の共有などが欠かせません。
理論や概念を理解するだけでなく、実際の企業で取り入れられているフレームワークや事例を活用して、できるところから始めるとよいでしょう。
組織活性化のために具体的な制度構築や指標管理などの仕方がわからない場合は、専門のコンサルティングサービスを活用するのがおすすめです。
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