ダイバーシティ&インクルージョンは、企業の発展に役立つ重要な考え方のひとつです。住友林業株式会社・富士通株式会社・日本航空株式会社など、数多くの企業で推進が図られています。
今回は、近年注目されている「ダイバーシティ&インクルージョン」の意味から推進によるメリットを解説します。具体的な施策例や取り組む際の問題点も紹介するので、参考にしてみてくださいね。
【 目 次 】
ダイバーシティ&インクルージョンとは?
ダイバーシティ&インクルージョンは、多様性を受け入れ企業としての成長を促進する取り組みを指した言葉です。
「ダイバーシティ」は、国籍・性別・価値観などが異なるさまざまな人材を雇用することで社会の変化に対応できるようにすること。「インクルージョン」は、受容を指しています。
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するメリット
あらゆる企業で推進され始めている「ダイバーシティ&インクルージョン」。企業には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1.離職率が低下
ダイバーシティ&インクルージョンの推進により、社員は能力や特性に合った業務に就けるようになります。
そのため「自分は活躍できている」という実感が湧きやすく、より会社へ貢献したいという意欲も出てくるようです。結果として、離職率の低下につながるとされています。
2.イノベーションの創出につながる
同じ考え方を持つ人材で構築された組織は、新しい視点を持つことが難しいです。ダイバーシティ&インクルージョンが推進されれば、価値観や文化、国籍の異なるさまざまな人材が雇用されます。
社員から出る意見やアイデアもバラエティに富み、イノベーションの創出につながるチャンスが増えるはずです。
3.優秀な人材を雇用できる
性別や国籍など、既存の労働条件を満たさなかった人の中にも優秀な人材は隠れています。
いままでは見つけられていなかった優秀な人材を確保する意味でも、ダイバーシティ&インクルージョンの推進は有効な施策です。
ダイバーシティ&インクルージョンが推進されている理由
なぜ今「ダイバーシティ&インクルージョン」が注目されているのでしょうか。ここでは、その理由を見ていきましょう。
1.少子高齢化社会による労働力不足
内閣府の調査によると、2019年10月1日現在の高齢化率は28.4%。今後も高齢化率は上昇していき、2025年には30%、2040年には35%を超えると予想されています。
企業も雇用の仕方を見直さなくてはいけません。「ダイバーシティ&インクルージョン」の推進にいち早く着手し、女性やシニア層、外国人、障害者など働き手となり得る幅広い人材をいかに確保するか。喫緊の課題として取り組む必要があるのです。
2.働き手の価値観の多様化
働き手の考え方の多様化に合わせて推進を図っているケースも多いです。
従来は、就職したら定年まで一つの会社で勤め上げることが一般的でした。しかし現在は、キャリアアップのために転職をしたり、スキルを活かして独立をしたりする人が増えています。
仕事だけでなく、プライベートも大切にしたいという考え方が、社会的に受け入れられているのも大きいです。
3.グローバル化が進んでいる
企業にとってのグローバル化とは、世界との経済的な結びつきが強まることを意味します。グローバル化が進んだ今、日本の企業だからといって「海外は無関係」と考えることはできません。
海外への労働力や資本の移動、投資を考えたとき、現地の様子や国際的な商取引に詳しい人材は当然必要になってきます。ダイバーシティ&インクルージョンはこうした変化に対応する手段になるのです。
ダイバーシティ&インクルージョン推進に向けて企業ができる取り組み
ここでは、企業がダイバーシティ&インクルージョンの推進に向けて行う具体的な取り組みを紹介します。
女性が活躍できる場づくり
1つ目は女性が活躍できる環境を整えることです。例として「女性の管理職を増やす」「結婚・出産後も働きやすい制度を整える」などが挙げられます。
女性の中にもキャリアを大事にしたい人は多いですが、ライフステージの変化によって仕事を辞めざるを得なくなるケースは現在も少なくありません。
ライフステージが変化しても働き続けられる環境、キャリアアップを諦めずにすむ環境作りが求められています。
障害者の雇用促進へ向けた施策を講ずる
障害者の雇用促進に向けた取り組みを進めることも効果的です。より具体的には、障害者が働きたいと思える環境の構築を目指すことになります。
とはいえ、すぐにできるものではありません。障害者雇用率を公表したり、障害者が活躍できる企業や部署の立ち上げをしたりなど、できるところから始めるのが現実的です。
LGBTQに対する理解促進を図る
LGBTQについての認知はまだ広がっていません。したがって理解を深め、受け入れられる社内環境を整えるところからの取り組みになります。
LGBTQへの理解を深める研修の導入や相談できる窓口を設けるなどの取り組みを行うとよいです。
多様性に合った働き方制度を設ける
時短制度、テレワークの導入、介護のための休暇取得を促進するなど、社員が自身の都合に合わせて働きやすい環境を整えます。
求職の際にも見られているポイントです。時間のかかる取り組みですが、長期的には人材確保につながる施策となるでしょう。
ダイバーシティ&インクルージョン推進企業の事例
ダイバーシティ&インクルージョンの推進企業の事例を紹介します。
どんな経営課題があったか
それに対して具体的にどんなことをしたか
その結果どうなったか
をまとめてあります。参考にしてみてください。
京阪ホテルズ&リゾーツ株式会社
経営課題 | 宿泊業の競争環境にて勝ち抜くための優秀な人材の確保、イノベーションの必要性 |
具体的な施策 |
|
結果 |
障害者雇用率:2020年2月に目標を上回る3.2%を記録 |
旭建設株式会社
経営課題 | 建設需要の拡大に対応するための若手の人材の確保・育成 |
具体的な施策 |
|
結果 |
新卒の女性社員が技術者として活躍 |
ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む際の注意点
ダイバーシティ&インクルージョンの推進には注意すべき点があります。取り組む際には、以下の2点を把握しておきましょう。
1.社員内で誤解が生まれる可能性がある
1つ目は、ダイバーシティ&インクルージョンを十分に理解していない社員により誤解が生まれる可能性がある点です。
多様な人材の受け入れに対して「マイノリティを優遇している」と捉えたり、女性の働きやすい環境作りに対して「女性ばかりが休暇を取っている」といった不満が出てきたりする可能性があります。
有給休暇や時短勤務などの制度利用者に対し、利用していない人から不満が出ることもあるでしょう。ダイバーシティ&インクルージョンを推進する際は社員へその意味をしっかりと伝えること、制度を利用していない人が不公平感を抱かないよう仕事量を調節するなどといった配慮が必要です。
2.多様化への抵抗感が生じる可能性がある
ダイバーシティ&インクルージョンの推進により、外国人やシニア層など幅広い人材の受け入れや女性の活躍促進など、これまでの労働環境や文化とは異なることが取り入れられるようになります。
そのため、既存社員のなかには多様化への抵抗感を抱いてしまう人もいるかもしれません。多様性を認め合い誰もが活躍できる職場となるよう、既存社員の意識改革の徹底も大切といえるでしょう。
まとめ
少子高齢化による労働力不足やグローバル化の進む社会のなかで企業が成長を続けるためには、ダイバーシティ&インクルージョンの推進が不可欠です。現時点でも、多くの企業が推進への取り組みを始めています。
記事内で紹介した施策例をもとに、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を検討してみてください。