採用は候補者と会社の双方にとって、とても大事なスタートラインです。
私は候補者に「無能」な人はいないと考えています。
ただ会社の採用担当として、見ているポイントは存在します。
「社風に合うか」
「現場から求められている条件を満たしているか」
「期待されたバリューを発揮できなくても努力でカバーできるか」
採用した人が入社後、社内で活躍してくれることが採用担当にとっては一番の喜びです。
そのためにやるべき前準備がのひとつが「募集要項づくり」。
今回は、中途採用に使う募集要項の作り方を説明します。
【 目 次 】
募集要項作成のポイント
募集要項作成で押さえるべきは、以下6つのポイントです。
社内の期待を確認する
市場の状況を俯瞰してみる
社内の期待値を調整する
候補者の行動パターンを観察する
募集要項に載せる自社ハイライトを決める
候補者が懸念しそうなことを説明できるようにしておく
それぞれ見ていきます。
ポイント1 社内の期待を確認する
「ジョブディスクリプション(募集要項)を作りました!」
と現場から言われたら、まずするべきはヒアリングです。
ニーズに合わない採用を避けるため、まず正直ベースで現場にニーズをヒアリングします。
今回の採用で社内のどういった課題が解決されることを望まれているのか。その課題は本当に「採用によって」解決できるのかを確認する必要があります。
雇用対策法により年齢や性別を限定して採用するのは禁止されていますが、「体力のある人がいい」「男女比率が崩れているので女性がいい」などのニーズもあるはずです。そういった細かい要望も拾っていきます。
ポイント2 市場の状況を俯瞰してみる
次に市場の状況を俯瞰して見てみます。これを調べるには、自分が転職者になってみるのが早いです。
転職サイトに登録をすると、年齢と経験に応じたスカウトが送られてきます。これを見ると、自社で採用したい人が市場でどのくらいの年収で引き合いがあるのかがわかります。
※転職サービス側からすると全然好ましくないのですが、実際こういった市場調査の仕方はよくなされています。
転職者向けのミートアップに参加してみるのもいいです。駆け出しの求職者が良く参加されています。
ここで自社のニーズには満たないけれど人柄がよい方などの希望年収や現年収の探りを入れます。
採用市場で自社がどのように評価されているのか、実際に聞いてみるのもよいです。たとえ条件が他社と同じでも、ネガティブな評価をされていたり認知が低い場合、採用はきびしいと考えられます。
ポイント3 社内の期待値を調整する
自社のニーズは、往々にして高くなりがちです。報酬に見合わないほど経験値の高い人を求めていたりします。そんな採用はできないので、あらかじめ調整するのです。
ここで注意すべきは、現場と人事で言葉の意味に差異があることです。「上昇志向がある」と現場が言う場合、「より専門性を高めたい人」という意味だったのに、人事側は「管理職になりたい人材」だと解釈をしてしまうことがあります。事前に確認しておきましょう。
その上で実際の市場感覚を肌で掴んだら、社内と交渉をします。具体的にはどこを譲歩できるかです。年収なのか、ご経験なのか、雇用形態なのか。
もちろん社内の希望に沿って採用するわけですが、母集団形成をして面接を始める前に期待値の調整は必ずしておくことをお勧めします。
ポイント4 候補者の行動パターンを観察する
自ら転職者になって市場調査をやってみると、自社で募集している方々の行動特性が見えてきます。
どういった媒体で情報収取をしているのか
どういったイベントに足を運ぶのか
趣味はなんなのか
行動パターンを想像できると求人の出し方が変わります。例えばハイスキル層はそう簡単に転職市場には出てこないので、業務委託でパートナーシップを築いてから自社雇用に切り替えるなどの手段が有効だったりします。
ポイント5 募集要項に載せる自社のハイライトを決める
「募集要項は条件さえ明確に書いてあればOK」と考えていませんか? 条件だけの募集要項では見てほしい人に届きません。まず応募してもらえないでしょう。
採用におけるKPIは母集団形成に置かれがちですが、母集団は多ければいいというものではありません。1人採用するのにマッチする人が1人応募してくれて採用できた。これがもっともよいストーリーです。
マッチする人が来てくれる確率をあげるために、自社で採用したい人がどのようなことを魅力的だと感じるかを分析します。その上で仮説を立て、自社のどこをハイライトにするのか決めます。
採用にあたっては、相手が欲しい情報を的確に伝えることが大切です。最初から自社のことをつらつらと述べるのではなく、細かい内容に話が進んできたときに「ここぞ」というポイントを説明できるようにしておきます。
ポイント6 候補者が懸念しそうなことを説明できるようにしておく
候補者が気にしそうな会社の問題点は何があるかを考えていきます。
これは求人票にでかでかと掲載する内容ではありませんが、短い言葉で端的に伝えておくことは重要です。いいことばかり書いてある求人表ほど怪しいものはないからです。
さいごに一番大切なこと
採用担当者は、自社と市場を誰よりも理解し、どちらの代弁者にもなれる人を目指してください。自社と候補者の双方を理解することで、募集要項に記載する内容はおのずと見えてきます。
採用の募集要項づくりは、まず相手の立場に立つことから。そのためには実際に組織や個人と対話をしていくことがもっとも重要と言えるでしょう。
▼この記事を書いた人 海野紘子(うんの ひろこ) 「わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所)」マネージャー |
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