経営状況が停滞あるいは傾き始めているとき、適切な改善策をできる限り早く講じることが重要です。しかし、どのような策が有効かわからないというケースもあるかと思います。そのようなときに役立つのが「マネジメントレビュー」です。経営改善だけでなく、顧客満足やコンプライアンスの向上になるなどさまざまな効果が期待できます。
この記事では、マネジメントレビューとは何か、そして導入するメリットについて徹底解説します。やり方も併せて紹介するので、気になる人はぜひ参考にしてみてください。
【 目 次 】
マネジメントレビューとは?
マネジメントレビューとは、「management=管理・運営」「review=見直し・再考」で構成された言葉で、経営管理の見直しをすることを指しています。
内部・外部監査の結果などから現状のマネジメント体制を振り返り、成果や問題を分析し、改善策を練ります。対象となる事柄は、製品の品質管理、環境管理、情報セキュリティなどです。マネジメントレビューは、基本的に経営層によって行われます。
マネジメントレビューの国際規格
マネジメントレビューには、見直しがしやすいようにISOによる規格が用意されています。ISOとは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略。国際的な取引をスムーズに行えるよう、商品やサービスに関して同品質・同レベルのものを提供できる基準を作成しています。
主な種類は、ISO14001、ISO9001、ISO/IEC27001の3つです。
ISO14001
ISO14001は、環境マネジメントの国際規格です。経済的なニーズとバランスを取りながら変化する環境状態に対応するための枠組みとなっています。認証取得には省エネの導入などだけでなく、いかに地球環境に悪影響を及ぼさないシステムを構築できるかが求められており、要求事項として次の3つを定めています。
環境パフォーマンス向上
順守義務を満たすこと
環境目標の達成
ISO14001の認証を取得することで、環境リスクの回避や省エネルギ―・省資源によるコスト削減、海外企業なども含めた取引要件の達成などの効果を得ることが可能です。また、自然環境に配慮した活動を行う企業であることも証明できます。
ISO9001
品質マネジメントの国際規格。170カ国、100万以上※1の組織で活用されています。ISO9001の要求事項には次の2つが挙げられています。
一貫した製品・サービスの提供
顧客満足度の向上
認証を受けることで、業務効率の改善や組織体制の強化、品質保証による社会的信頼・顧客満足の向上などさまざまな効果が得られます。
ISO/IEC27001
情報セキュリティマネジメントの国際規格。情報の機密性・完全性・可用性をバランスよくマネジメントして有効活用するための枠組みです。
要求事項は、次の2点です。
情報セキュリティマネジメントの確立・実施・維持・継続的な改善
情報セキュリティのリスクアセスメント・リスク対応
認証を取得することで、情報リスクの低減や社員の情報セキュリティに対する意識・モラルの向上、組織内外からの信頼獲得といった効果を得られます。
ISO規格は認証取得後も外部の審査員によってチェックが行われ、要求事項のどれかひとつでも満たしていないと不適合となります。
不適合とされた場合、原因の除去が必要です。これにより、品質の維持・顧客満足度の向上など継続的な改善が可能となります。定期的な審査が行われるので、組織内にほどよい緊張感を保持できるというメリットもあります。
マネジメントレビューはインプットとアウトプットで構成されている
マネジメントレビューは、インプットとアウトプットの2種類で構成されています。
インプット
インプットは、要求事項をもとに情報収集し分析を行うことです。情報収集する内容には、以下のような事柄が挙げられます。
内部・外部監査の結果
顧客からのフィードバック
前回のマネジメントレビュー結果へのフォロー
経営活動の現状
改善のための提案内容 など
マネジメント規格の要求事項によって、把握すべき内容は異なります。見直す規格の要求事項をしっかりと把握したうえで、インプットを行うことが大切です。
アウトプット
インプットによって集まった情報をもとに、どのように改善をするのかという結論を出すことを指します。
組織としてどの部分をどのように改善していくのか、具体的に計画を立てて実践に移しましょう。
マネジメントレビューを導入するメリット
マネジメントレビューを導入することで、以下のようなメリットを得られます。
商品やサービスの品質保証・改善ができる
コンプライアンスがより強固になる
経営状況を改善できる
商品やサービスの品質保証・改善ができる
品質マネジメントの国際規格(ISO9001)を取得すれば、一貫した商品やサービスを提供している証明になるため、顧客への品質保証につながります。
また、企業全体で商品やサービスの品質の現状把握も可能。経営層が現状の課題を把握し、改善に向けた計画を立て組織全体で実施すれば、商品やサービスの品質改善もしやすいはずです。
コンプライアンスがより強固になる
法令の遵守がより強化されるというメリットもあります。組織内の活動を見直すことで、社員の労働環境は悪くないか、社内ルールは守られているかなど普段は見えない部分が明確になります。
マネジメントレビューを定期的に行うことにより、社員には一定の緊張感が生まれ、コンプライアンスの徹底につながるのです。コンプライアンスが強固な企業はクリーンなイメージを抱かれやすいため、世間からの評価も高まります。
経営状況の改善ができる
経営が停滞したり傾き始めていたりしたら、問題点をいち早く把握して適切な改善策を講じなければなりません。その際、手元に必要な情報が揃っていれば、改善に早く着手できます。
内部・外部監査の結果や顧客からのフィードバック、前回のマネジメントレビュー結果へのフォロー、経営活動の現状、改善のための提案内容など、情報を収集し分析することで適切な改善策を導き出せる可能性が高まるのです。
マネジメントレビューのやり方
マネジメントレビューを行いたいけれど方法がわからないという人のために、ここからはやり方を説明していきます。手順は、次の通りです。
目的を明確にする
ISO規格の要求事項がわかるチェックリストを作成しインプットに当たる
経営者や各部門の責任者にて会議を行う日程調整をする
顧客満足度の結果報告・発生した不具合の情報共有、監査の結果、品質に関する規格・法規の変更情報などを共有し改善策を考える
マネジメントレビューは、目的なく行っても意味がありません。必ず何のために行うのか明確にし、改善に向けた議論や行動を積極的に行う姿勢が大切です。議論ができるように、まずはインプットの作業に当たりましょう。インプットをする際には、必要な情報が漏れなく集められるようにISO規格の要求事項が網羅されたチェックリストの作成がおすすめです。
会議は経営者だけでなく、品質管理・営業・設計・生産管理・サービスなど各部門の責任者を巻き込んで開催するとよいでしょう。
会議は定期的に行うことが大切です。定期的に行うことで、各要求事項に対する進捗状態を把握できます。
まとめ
以上、マネジメントレビューについてお伝えしました。
マネジメントレビューを実施することにより、商品・サービスの品質保証や改善、コンプライアンスの徹底、経営状況の改善などさまざまなメリットが得られます。
インプットを行う際には、ISO規格の要求事項をもれなく収集できるようにチェックリストを活用するとよいです。マネジメントレビューにて、経営状況の立て直しを図りましょう。
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