企業内でESG※を意識することが増え、マイノリティの活躍に焦点を当てる企業も増えてきたところかと思います。そのような中で大切になってくるのは「ポジティブな助け合い」です。
たとえば時短中のお母さんが早く帰るとき、メンバーの中には「また私ばかり残業…」と思ってしまう人がいるかもしれません。こういったネガティブな感情はのちに組織の崩壊につながります。
いかにポジティブな助け合いの輪を広げていくのかが今回のお話の論点となります。
※環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉。企業が長期的に成長するために経営においてESGの3つの観点が必要とされている。
【 目 次 】
ポジティブな助け合いとは
本記事における「ポジティブな助け合い」とは、お互い様の気持ちで助け合うことです。
人間はとても凸凹としており、得意不得意があります。それを前提として各々の特性を認め合い、相手の不得意やイレギュラーをどうフォローしていくかを前向きに考えます。
これを実現するには、お互いの良さを認め合うだけでなく、苦手な部分も認め合えるような文化醸成が必要です。人は自分の苦手なことは開示しづらいものです。チームの中で率先して開示するメンバーが出てきたとき、大いに認めてどうリカバーするか。小さなキッカケから成功体験を積み重ねることが、ポジティブな文化醸成につながります。
ポジティブな助け合いが生むメリット
ポジティブな助け合いによるメリット。それは「助けてもらえた、助け合えたという体験がチームをひとつにする」ことです。
助けが必要になる日は誰にでも突然訪れます。結婚、妊娠。自分が事故にあうかもしれない。あるいは知人のトラブルに巻き込まれるかもしれない。
突発的なものは仕方ないにしても、ある程度予測ができることなら「助けが必要になりそうです」というアラートを上げられると周りはサポートがしやすいです。突然人が抜けて混乱を招くこともなく、周りの負荷は少し増えるものの業務を維持していくことができます。
ポジティブな助け合いはメンバーそれぞれがマイノリティになった時に効果を発揮します。助けられる経験をすることで組織に対するロイヤリティが上がるだけでなく、助ける側に回ったときポジティブに受け止められるようになるのです。
自分がマイノリティになる可能性を真剣に考えれば、助け合いにメリットがあるのは明白です。
助け合いから相乗効果へ
ポジティブな助け合いが浸透すると、さらにいいことがあります。
たとえば離職率が低下します。組織へのロイヤリティが上がるからです。また人を助けている中で、メンバー自身が認識していなかった才能が花開くこともあります。無意識の思い込みで苦手だと思っていたことができるようになったりします。
こういった助け合いがグループを「越境」するようになると、組織は円滑に回り出します。これは組織のイノベーションを起こすうえで不可欠な流れです。
ポジティブな助け合い文化の醸成
相手の変化をそのままに受け入れて、自分にできることをする。ポジティブな助け合いとはただそれだけのことです。
でも、いざ他人の仕事を引き取ろうとすると「自分の仕事が犠牲にならないか」「自分の業務に支障を来すのではないか」という心配もあります。この心配を少なくしてあげられれば、助け合いのループは回りやすくなるかもしれません。
たとえば「助け合いに積極的に関わっていたか」を評価軸に加えたらどうでしょう。助けてもらった人が「ごめんなさい」ではなく「ありがとうございます」と言える職場になっていくのではないでしょうか。組織文化の醸成のために評価に余裕を持たせておくことはとても重要です。
まとめ
生産性向上が叫ばれて久しいですが、効率を優先するあまり、昔ながらの「お互い様」「おかげ様」の文化はビジネス社会において薄まりつつあるように思います。受けた恩を先の代に返していく「恩送り」という言葉に納得感があるのなら、今一度その価値を見返してみるべき時期なのかもしれません。
職場に相談するすることなく、結婚、妊娠、介護などを理由に離職を決めざるをえないのだとしたら、とても残念だなと感じます。ポジティブな助け合い文化の醸成を広げていくのは、個人のスタンスの変化からです。この記事をきっかけに最初の1歩を踏み出していただけたらうれしいです。
この記事を書いた人 海野 紘子(うんの ひろこ) アイデンティティー・パートナーズ株式会社、わたし・みらい・創造センター(企業教育総合研究所) マネージャー |
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