
口を開けば、人を非難したり、自分自身が責められているという受け取り方をしてしまう傾向があるメンバーはいないでしょうか。例えば、失敗に対し、自分自身の失敗はおのずと隠してしまったり、その反面、人の失敗に対してはとても厳しく意見をいったり、取り締まったりしてしまう行動に出てしまうこともしばしば目にします。
このような状態からメンバーを抜け出させるためにはどのような関わり方、対話の方法が有効かを考えました。
【 目 次 】
押さえておくべき行動のポイント
まず、押さえておく必要があるのは、なぜ人はそういった行動をとってしまうのだろうか、という点です。本人自身の捉え方もあるだろうし、周囲の環境が影響を与えている可能性もあるでしょう。
いくつか考えられる状況をあげてみました。
自己保身の欲求:責任を負うことでリスクや負荷が増える可能性があるため、メンバーは自身の地位や評価を守るために責任を回避しようとする場合があります。
不確実性への恐れ:ミスや問題が起こった場合、メンバーはその原因や解決策を正確に把握できない場合があります。そのため、自身の能力や知識に自信がない場合には責任を回避することがあります。
コミュニケーションの不足:メンバーが十分な情報や指示を受け取っていない場合、問題の責任を正確に把握することが難しくなります。上司とのコミュニケーション不足や情報の共有不足が、責任転嫁の原因になることがあります。
チーム文化や組織風土:メンバーが所属するチームや組織の文化や風土が、責任転嫁を助長している場合もあります。例えば、失敗に対する厳しい制裁や批判的な雰囲気があると、メンバーは責任を回避しようとする可能性が高まります。
責任の教育不足:メンバーが責任を果たす方法や重要性についての十分な教育や指導を受けていない場合、責任転嫁の傾向が生じることがあります。メンバーが責任を持つことの意義や影響について理解していない場合、責任回避に走る可能性があります。
これらの要因は単独で発生する場合もありますし、複数の要因が組み合わさっている場合もあります。
いずれにしろ、当の本人にとって、成長するうえで、良い状態かというと、安心して成長できる環境ではないことは確かです。
責任転嫁を防ぐための対話アプローチ

メンバーが常に責任転嫁をする傾向がある場合、それに対処するためにいくつかの対話術を試すことができます。以下にいくつかのアプローチを示します。
詳細な具体例を求める
メンバーが責任を回避しようとする場合、具体的な状況や行動について尋ねてみましょう。彼らにどのような問題が発生したのか、どのような行動をとったのかを具体的に説明してもらいます。これにより、彼らが責任を持っていないことを明確にすることができます。
【例】
上司:「プロジェクトが遅れた原因は何ですか?具体的な例を教えてください。」
メンバー:「うーん、他のチームが遅れていたので、私たちの進捗も遅れたんです。」
上司:「それは理解できますが、具体的にどのチームが遅れたのか、どのようにそれが私たちの進捗に影響したのか教えてもらえますか?」
彼らの意見や提案を求める
メンバーとの対話に参加し、彼らが問題をどのように解決するかを考える余地を与えましょう。彼らに自身の意見や提案を述べるよう促すことで、彼らが責任を持つことが重要であることを理解するかもしれません。
【例】
上司:「プロジェクトがうまく進まない理由について、あなたの意見を聞かせてください。どのように改善できると思いますか?」
メンバー:「えーと、他のチームの連絡不足が問題です。私たちがもっと情報を共有できれば、進捗も改善すると思います。」
上司:「それは有益な提案ですね。具体的にどのように情報共有を改善できると思いますか?」
フィードバックと期待を明確にする
メンバーに対して明確なフィードバックと期待を伝えましょう。彼らが責任を避ける行動をした場合には、それについて率直に指摘し、今後の行動に関する期待を明確に伝えます。
【例】
上司:「先週の報告書には、チーム全体の進捗が明確に記載されていなかったように思います。具体的に進捗を教えてください。」
メンバー:「先週時点ではなかなか状況が捉えられておらず、明確に記載することが出来ませんでした。現地のスタッフから報告があがってこなかったからです。来週には明らかに出来ます。」
上司:「報告が挙げられなかった状況だったという事は理解しました。1点、是非やってほしい事があるのだけど、フィードバックしてもいいでしょうか。
報告があがってこなかったという事だったが、こちらから状況を質問するタイミングはつくれていたでしょうか」
まずは、本人が抱えている問題を一緒に解決することを伝える
紹介した、対話術で、まずは事実を確認し、本人にも責任があり、改善出来る事がある事を明確にする事が大切です。ただ、その際に本人のせいにするのではなく、上司自身が一緒にその問題を解決する姿勢である事を伝えます。
本人が抱えている問題を、感情と業務上の仕組みの問題に分ける
その上で、仕組み上変更すれば解決する事、感情のもつれが影響している事に問題を分ける必要があると考えます。
理由は、1つの事象の中で、仕組みで解決する事と、感情に関わる事が混ざっていた時、人は仕組みで解決しようとしますが、感情に折り合いがついて無いままだと、また別の事象で問題が発生し、根本的解決にならないためです。
感情のもつれと仕組みの変更は、責任転嫁の問題を解決するために異なるアプローチを取ることを意味します。
感情のもつれに対処する場合、主な焦点はメンバーの感情や心理状態にあります。メンバーが責任を転嫁する背後にある不安、恐れ、自己防衛のメカニズムなどを理解し、その感情的な要素を解決することが目指されます。
これには、メンバーとの対話やコーチングを通じて、彼らの不安や恐れを受け止め、自己効力感を高め、責任を受け入れるためのサポートを提供することが含まれます。
一方、仕組みの変更は、組織やチームの仕組みや文化を変えることに焦点を当てています。責任転嫁が起こりやすい環境や組織文化を改善し、責任を明確化し、チームメンバーが責任を持つことを奨励する仕組みを構築することが目指されます。
これには、明確な役割と責任の定義、適切な情報の共有、フィードバックの文化の確立などが含まれます。
まとめ
感情のもつれを解決するには、個別のメンバーの心理状態や動機づけを理解し、彼らとの対話やコーチングを通じてサポートすることが重要です。
一方、仕組みの変更は、組織全体の責任文化を改善し、メンバーが責任を果たしやすい環境を整備するために取るべきです。両方のアプローチを組み合わせることで、責任転嫁の問題をより効果的に解決することができるでしょう。