若手社員の考える力をどう育てればいい?仕組みで思考を広げる実践法
- なつき 高橋
- 9月30日
- 読了時間: 5分

指示待ちではなく、自ら課題を発見し解決できる力を育てることは、若手育成の大きなテーマです。
本記事では、仕組みを通して考える力を伸ばす具体的な方法を解説します。
【 目 次 】
なぜ若手社員に「考える力」が必要なのか

若手社員は業務に慣れることで精一杯になりがちですが、企業にとっては早期から「仕組みで考える力」を持たせることが重要です。この力を持つと、単なる作業者ではなく、自ら改善や提案ができる人材へと成長します。
厚生労働省の調査でも、若手社員の多くが「業務量が多く思考の余裕がない」と回答しており(※)、現場の指示をこなすだけでは成長に限界があることが示されています。
※ 出典:厚生労働省|『令和5年「新規学卒就職者の職場定着状況」』
「仕組みで考える」とは何か
「仕組みで考える」とは、目の前の仕事を点で捉えるのではなく、流れや因果関係を把握して全体像を理解する思考法です。
タスク思考:言われた仕事を処理する
仕組み思考:なぜその仕事が必要か、どのプロセスとつながっているかを考える
例:
単に「データを入力する」のではなく、そのデータが営業活動や顧客満足度の改善にどう影響するかを理解する。
クレーム対応を「処理する」のではなく、仕組み上の原因を探り改善策を考える。
※ 出典:経済産業省|『人材マネジメント変革に関する調査研究』(2023年)
考える力を伸ばす具体的なアプローチ
若手社員に「仕組みで考える力」を育てるためには、成長のプロセスを段階的に設計することが大切です。
下図は、そのプロセスを示したものです。

図:若手社員が「仕組みで考える力」を身につけるプロセス
このプロセスは次の4ステップで循環します。
仕組みを理解する(なぜ・どうして?を学ぶ)
問題を発見する(現場で気づく)
改善を提案する(仕組みを踏まえて考える)
実践・振り返り(学びを次に活かす)
つまり、知識を学ぶだけでは不十分で、「気づき → 提案 → 実行 → 振り返り」 のサイクルを回すことで「考える力」が定着します。
では、こうしたプロセスを職場でどのように実践へと落とし込めばよいのでしょうか。以下では、実際のアプローチを3つの観点から紹介します。
1. 業務をプロセスで捉えさせる
業務全体をフローで把握させると、自分の役割の意味が理解できます。
自部門の業務フローを描かせる
顧客対応から請求処理までの流れを体験させる
改善点を提案させる
2. 小さな改善活動を任せる
部分的でも「仕組みに働きかける経験」をさせることが重要です。
報告フォーマットを改善させる
在庫管理のルールを見直す小プロジェクトを任せる
3. 部門横断での学びを取り入れる
他部署と関わると、仕事の意味やつながりを実感できます。
営業部と製造部の合同ミーティングに参加させる
他部署の先輩にインタビューし、記事にまとめさせる
成功事例:ビジネスモデル思考プログラムの活用

若手社員の「仕組みで考える力」を育成する取り組みとして注目されるのが、ビジネスモデル思考プログラムです。
このプログラムでは、経営学のフレームワークをベースに、自社のビジネスモデルを分解・分析し、自分の業務がどのように全体へ貢献しているのかを考えるプロセスを体験します。
研修は座学にとどまらず、複数部門が参加するワークショップ形式で進行されるため、若手社員が「部門を越えて考える力」を自然に身につけられるのが特徴です。
実際に導入した企業では、以下のような効果が報告されています。
現場業務と経営戦略のつながりを理解し、「なぜこの仕事をしているのか」が明確になった。
顧客価値を基点に発想する習慣が身につき、提案の質が向上した。
部門横断の視点を獲得し、組織全体を意識した行動が増えた。
このように、仕組みを理解しながら考える力を養うことは、若手社員が“指示待ち”から脱却し、自ら課題を発見し提案できる人材へと成長するうえで大きな効果を発揮します。
アイデンティティー・パートナーズ株式会社|ビジネスモデル思考プログラムより
研修で重視すべきポイント
体験型・対話型の研修は、若手に「経営と現場をつなぐ視点」を育み、行動変容を引き出します。
経営戦略と現場課題を結びつける内容
部署や職種を越えた参加者が交流できる設計
実務に直結するアウトプットの場があること
知識のインプットだけで終わらず、実践の場と結びつけることが成果を左右します。
よくある質問(FAQ)
Q1. 若手社員が考える力を伸ばせない原因は?
A. 業務に追われて余裕がないこと、全体像を学ぶ機会が不足していることが大きな要因です。
Q2. 考える力はどれくらいで身につく?
A. 数か月〜1年程度、業務と学びを結びつけた継続的な取り組みが効果的です。
Q3. 研修だけで十分?
A. 研修はきっかけにすぎません。実務での実践や上司との振り返りが不可欠です。
まとめ:若手社員の成長が組織の未来をつくる
若手社員に「仕組みで考える力」を育てることは、将来のリーダーシップや組織の競争力を支える基盤になります。
早期からの取り組みが、組織の持続的な成長を確かなものにします。